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同居人の神様と妖精  作者: あるみす
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出会い

よろしくお願いします

  私は成瀬心奈なるせここなって言います。

 なんて事の無い女子大生です。

  容姿だって普通を地で行ってますし、アニメとかならモブで押し通る感じの普通の女子大生なんですよ。


 いや、本当にただの女の子なの!

  小説とかじゃ良くある「私って凄いんですよ!」見たいな能力とか特技とかも持ってない普通を地で行ってます。



  ……まぁ、おかしな所は無いとは言いきれませんけどね…。

  でも、それは私の事じゃなくて私の『同居人』のお話です。



  そんな変な同居人に出会ったのは夏休みのお彼岸の頃です。

  そんな昔のお話でもないですから、少し振り返って見ましょうか。

  では、少し私と少し変わった同居人のお話を聞いてください。



 ◇



  私は成瀬心奈。今年から建築系の大学に入った18歳の女子大生です。

  大学の授業はキツくって毎日ひいひい言いながら通ってますけど、決して辛い訳じゃないですよ。それに、私は建築系に進みたい夢がありますからね。


  そんな私が今居るのは成瀬家のお墓の前です。実家に帰ってくると、まず最初にここに来ます。

  私はドがつく程のおじいちゃんっ子でした。それこそずっとベッタリ引っ付いて離れない様な…ね?お姉ちゃんも妹もいますけど私が一番おじいちゃんに甘えてたと思います。


  でもおじいちゃんはもうこの世には居ません。

  おじいちゃんこと成瀬哲郎が亡くなったのが一年前の事で、元自衛官のおじいちゃんは最後まで毅然とした優しい人でした。

  おじいちゃんは最後、うつらうつらと誰かを呼んでいたらしいのですが…

  らしいと言うのは私はその場には居合わせなかったからです。


  私はその当時事故で気を失っていたんですよね…。車に撥ねられて、昏睡状態だった私は正直助かる見込みは本当に少なかったらしいんです。

  でも、そんな危機的状況から回復に向かった時に丁度おじいちゃんが亡くなったんです。

 

  家族みんなは「おじいちゃんが助けてくれたんだよ!」って言ってくれましたし私もそう信じています。

  …だけど私はその事が気がかりで仕方ないんです。

  私が事故など起こさなければおじいちゃんは死なずに済んだんじゃ無いのかって…


  今となってはおじいちゃんと話す事も出来ないから…。

  この気持ちはもう晴れる事は無いけど、せめて私はおじいちゃんが好きだった西洋の建築を勉強して、空から見つけられるようにしたいの。



  私は今日もおじいちゃんに報告をするつもりでお墓の前で手を合わせて祈る。

  夏のじめじめした熱気が私の肌を蒸すように包んでいく。吹き出した汗が服を濡らして時間が経つにつれて重さが増していく。


  そして、私がお墓の前から引き返そうとした時だった。


『……心奈さん』


「…え?」


  私は誰かに呼ばれた様な気がして後ろを振り返ったけど、あるのはおじいちゃんのお墓だけ。人っ子一人居ないお墓で私の名前が呼ばれるなんて事もありえないと思う。


「心奈さん」

 

「だ、誰!?」


  今度はハッキリと耳に届いた。

  姿形も分からない誰かに自分の名前が呼ばれていると言う漠然とした恐ろしさが急に襲ってきて、あれほど暑くて汗をかいていた体に鳥肌が立ってきた。


「心奈さん!ここです!」


  もう一度聞こえてきた声に私は声も喉をつっかえてどうする事も出来ない。

  頭は逃げたい気持ちでいっぱいなのに足が竦んで鉛のように重く動かない。


「ここです!!下を見てください!」


「……んぇ?」


  恐る恐る下に顔を向けるとそこには『妖精』が居た。


「え!?なになに?私?私なの?私何かいけない事しちゃったの?」

「お、落ち着いて下さい!大丈夫ですよ、私は何もしませんから!」

「ゆ、夢でも見てるのかな…妖精なんておとぎ話じゃあるまいし…」


  私の脳は突然現れた妖精の様な存在に上手く処理しきれない。夢だ、これは夢なんだ!って無理やり納得しようとした所でその妖精が詰め寄ってきた。


「ひっ…!」

「そんなに怯えなくて大丈夫ですよぅ」

「え、えぇ…」

「えっとぉ、私は妖精のルウと申します!この度は心奈さんの今後の生活の為にやって来ましたー!」

「ごめん、あんまりよくわかんかいや…?」

「んー……そうですねー、それはご自身で説明なさったらどうですか?」

「…?」


 落ち着いてみるとものすごく可愛い妖精さんは『私でない誰か』に話しかけた。

 逃げることもできず、じっとしてるとまたどこからか声が聞こえてきた。


「それもそうね。」

「え………………猫?」


  私の目の前に現れたのは綺麗なアイスブルーの毛並みを煌めかせるなんとも愛らしい猫だった。だけど、今の声ってこの子から聞こえた様な……。気のせい…だよね?


「チト様〜姿が猫のままですよ?」

「おっと、失敬失敬なの。んーーーっ!」

「おわっ」


  猫が可愛らしい唸り声を上げたかと思うとポフンと軽い音を立ててその影が膨れ上がった。

  そして、煙から出てきたのはこれまた恐ろしく可愛い美少女だった。


「え…かわいい……」

「にゃふふん!驚いた?妾はチト。見ての通り猫の神様なの!」

「神様…?」


  私の目の前に居るのは綺麗なアイスブルーの艶やかな髪と吸い込まれるような深い蒼い瞳をもつ小さな少女で、はたから見たら小学生低学年程度の大きさだ。

  それに、いきなりで神様とか言われても正直信じられない…。でも、人間には有り得ない猫耳と尻尾が顔を覗かせてるんだけどね?コスプレ…じゃないよね…。

 でも、この子からはそん「子供」とは思えない何かを感じる。本当に神様なんているのかな。



「むっ、お前、妾の事信じてないなー?」

「え!?…えー、いやー…信じ…てますよ?」

「無理に気を使わにゃくていい。妾には全てお見通しだからな!」


  どういう原理で見破ってるのか知らないけど私の心を見透かされてるような感覚に近い。


「え、えっと、それでお二人は私に何か御用でしょう…か?」


  腰をかがめて猫耳の少女に目線を合わせて改めて聞いてみると、少女は小さな胸を張って見下ろす様に言ってきた。

  だけど、その様子がどこか可愛らしくて私はちっとも嫌な気にならない。


「妾達はお前を見守るためにやってきたのだ!」

「みま…もる?」




  それから私は猫娘のチトさんと妖精のルウさんに小一時間説明されて、暑さも相当だったので近くの和菓子屋の露店にやって来ていた。


「あー、暑い…冷たいものが食べたいよ…」


  私が店員に人数を伝えて、椅子に座ろうとするとチトさんは私の横にちょこんと腰を下ろし、ルウさんもチトさんの肩に腰をかける。

  チトさんは時折耳をぴこぴこと動かしたり銀色の柔らかそうな尻尾をふりふりしてるのを見るとどこか楽しそうにも感じるよ。


「二人とも、何か食べたいものない?」

「!!何か食べさせてくれるの?」

「うん♪いいよ、それくらい」

「でも大丈夫ですか?チト様はともかく私まで」

「いいのいいの、それに二人はこれから私と一緒に居てくれるんでしょ?」

「それは…そうですけど」

「だったら遠慮しないで?仲間はずれなんてしないからさ」


  私がルウさんの小さな頬を指先でつつくとルウさんは少し照れながらも嬉しそうに私の手に頬をスリスリしてくれる。ぷにぷにとした柔らかい頬やクリーム色の柔らかい髪の毛の感触が凄く心地良い。


「ありがとうございます、心奈さん」

「うん、大丈夫だよ。ルウさん」


  私達は微笑み会う中で私は少し不思議な感覚に陥っていた。

  この二人と居ると妙に心地良い。それこそおじいちゃんといた時みたいな安心感と言うか…。

  さっきも言った通り、この二人は私と過ごす為にわざわざ来てくれたみたいなの。おじいちゃんが死んだ時に案内?したのがチトさんの上司にあたる神様らしくて、その神様に言われて事故にあった私の為に助けに降りてきてくれたみたいなの。

  つまり、私がここに居るのは助けてくれた二人のお陰。だから私はこの二人を突っぱねるなんて事は出来なかった。寧ろ、私はこの二人がとっても愛おしくて、今後の生活にワクワクしていた。


「心奈!これ美味しい!!」

「ほんと?良かったぁ〜」


  チトさんは餡蜜のかかったアイスを頬ばって嬉しそうにもぐもぐと口を動かしている。

  私はそんなチトさんの口元に付いた餡蜜をティッシュで拭ってやるとむぐむぐと可愛く鳴いたが、されるがままに拭かれている。

  神様らしいけどどっちかって言うと可愛い妹みたいだ。うちの妹は…うん、今もよく懐いてくれてはいるけどね?


「心奈さん、私も1口貰っていいですか?」

「それはいいけど、新しく頼まなくて大丈夫?」

「はい!私、身体が見ての通り小さいので少しで十分なんです♪」

「んー、なるほどね。じゃあ、はい!」


  私はスプーンの先でルウさんの小さな口でも食べれる位の大きさを掬ってやる。

  ルウさんは小鳥が啄むようにふよふよと浮かびながら、ぱくりと頬張ると蕩けたように顔を綻ばせる。

  だけど、飲み込んだ辺りで少しルウさんの表情に影が差した気がした。

  なんというか…申し訳なさがあったような…?多分見間違いだろうし気にしないでおこう。

  取り敢えずはお母さん達にどう説明しようかな。




 ◇




  私は下宿先のある京都に向かって新幹線の中で揺られていた。

  横には行きには居なかった小さな人影、つまりチトさんとルウさんがちょこんと椅子に腰掛けて、二人で何か遊んでいるようだ。

 

  結果的に言うとうちの両親は恐ろしいくらいすんなりと二人の存在を受け入れてしまったのだ。それこそ、昔からの知り合いの様な納得のしようだった。私にとってはそれの方が嬉しかったし、余計な面倒がかからなくて助かった。

  とにかく、まだ私の悩み事は尽きてない。

  ルウさんはともかく、チトさんの寝床などどうしようか。来客用の布団って買ってたかなぁ…


  私がそんな事を考えているとルウさんがふよふよと浮かび上がって私の目の前で止まった。その顔はどこか寂しそうに感じる。


「ルウさん、どうかした?」

「あっ…、えっと…」


  ルウさんがここまで歯切れ悪いのは珍しい。付き合いこそ短いけど、ルウさんはいつもはきはきと話す人だ。


「ん?」


  私が優しく首を傾げてみるとルウさんは少し考えたあと、話しづらそうに重々しい口を開いた。


「心奈さん……ごめんっ、なさい!」

「……え?」


 いきなり謝られても私も理解出来ずにこんがらがってしまう。


「何がごめんなの?ルウさん何かしたの?」

「……実は私達、心奈さんの事を騙していたんです。」


  私はルウさんの言葉を聞いて疑問で頭がいっぱいになった。隣をみるとチトさんも頭にある猫耳と尻尾をしゅんと元気なさそうに垂れている。


「すーっはぁー、うんっ!じゃあ、話してみて?」

「はい…。実は今、心奈さんは神様の手によって命を狙われています」


  私の頭は理解できる容量を越してしまった。ルウさんの言葉が分からない。分からないけど理解出来てしまう。そんな不思議な感覚だ。


「ちょっと…想定外…かな?」


  私の頬には冷や汗が伝って落ちていくのだった。



  これは私が抗いようのない運命の捻りに足を踏み入れてしまった物語です。


一話になりますっ!

今後は前作と並行しての執筆になりますので少し投稿頻度は遅れるかも知れませんが、空いた時間で前作をよんで頂けると嬉しいです!


では第2話にてお会いしましょう!

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