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1度目と2度目は長いプロローグ

「ボクの秘密…みせてあげる」


「え、はぁぁぁ!?」


その日俺は、理解する。

人生にはイージーモードなど決して存在しない。

必ず何かが問題は起こるということ。


そして改めて再認識する。


この世界が『バグった』場所だということを。







ゴミだらけの部屋の中、男がポツリつぶやく。


「つまんねーなー。生きるのも億劫だわ。」

名前は明日人あすと

前向きな名前をもらっておきながら明日がこなければいいと思っているフリーター。


高校卒業してから大学受験に落ち、何浪したかわからず、生きる気力を失ってしまった。


友達はみんな大学行って卒業して順風満帆。結婚してるやつすらいる。そんな「俺めっちゃ幸せじゃない?」写真をツイッターやインスタ、ラインで見るたびに、しっかりとダメージを受けている。


現実逃避のためにとりあえずゲーム三昧をするわけだが、


魔◯村とかダー◯ソウルのような死にゲーは何周もした。

えふ◯ふとかドラ◯エもやりつくした。


人生にもはや未練がない。


「はぁ、ゲームしかねーやつからゲーム取り上げたらなんも残らねーじゃんか」


押し寄せる現実の虚しさが空調の音と共にやってくる。

無音よりも寂しいその音を独り言でかき消す。


「人生やりなおせたらなー。どこで間違ったかなー。今からならやる気出る人生ちゃんとえらべるんだけどなー。」



叶いもしない馬鹿なことを大の字で寝ながら天井に向かって語る。



ポンっ


「ん?」


寝ている俺の目の前に現れた小さな天使のような存在。

可愛らしいショートカットの子だ。


「あれ?ついにお迎えが?何もしないから天界が迎えに来たのか。地獄でもどこでもいってやるよ。」


そう悪態をついた俺に小さい天使は口を開いた。


「おいお前、俺様のために」


「男かよ」


可愛らしい中性的な容姿から聞こえる普通の男性声。


「あ?なんだ悪いか?」


しかも意外とオラついている。


「いや、悪くないけどどうせ幻なら天使は美少女希望だったんだ…。女の子と慣れてなさすぎてこんな時まで男を求めてしまったのか?」


頭を抱え絶望する俺に天使はため息をつきながら語る。


「何をごちゃごちゃ言ってるんだ無価値な人間め。ここに俺様が来てやったのを幸せに思え」


「幸せ?なにが?はっはっは、なんか金でもくれんの?」


「それ以上の価値があるぞ。今お前は命を投げ出した。つまりお前はもう無価値だ。そこに価値を見出してやる」


「えっとちょっといってる意味わかんないんだけど??」


「生きる希望。生きる楽しさを教えてやる。」


「だからそれなによ。」


「今からお前を転生させる。そこで生の幸せを味わえ」


「あーはいはい転生ね。…え?」


「どうだ良い話だろう」


「お、俺は疲れすぎて幻覚で男の天使を見るようになり、さらには異世界転生まで求めてしまったのか!?」


「幻覚じゃない現実だ。」


「いやいやもういいんだそういうの…。俺は今日終わったんだ…。だってこんな状況で俺が求めたのは男!!俺そういう趣味があったんだな!終わってる!」


錯乱状態になった俺の目の前で舌打ちする男天使。

ポンッと音ともに煙があがる。そこからでてきたのはなんと美少女に変身した天使だった。


「この姿ならちゃちゃいれずに話を聞くか?」


声まで可愛い。外見もまさに理想の美少女天使。



「こんな展開がぁ!?幻覚最高ーーー!俺には明晰夢をリアルに見れる能力があったのか!」


錯乱状態から興奮状態へ。

どうせ夢ならば夢らしく夢を楽しもうと天使に抱きつこうとする。



「やめろ変態がーーー!」



バリバリバリバリバリ!!!


「ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!!」


天使の手は帯電していた。帯電したビンタをくらい吹っ飛ぶ俺。


「おい変態!!!次無礼なことしたら普通に殺すぞ!!!」


天使は男の姿と戻り、プスプスとこげる俺を見下しながら怒りを露わにした。


「ま、まってくれ…いてえ…あれ?これ現実?」


「だからそういってるだろう変態。冷静になったか?」


まだ信じられなかったがとりあえず天使の話を聞くことにした。


この天使は実は見習い天使であり最終試験で人間の命を救うために人間界まで降りてきたらしい。


事故ってる人とかを助けるという直接的なものでは無く、人生を諦めている人間に生の喜びをわからせるというものらしい。だから俺のところにきたのだとか。


じゃあどうわからせるのか?

そのやり方がなんと、人を異世界転生させるというもの。


「なんだ!最高かよ!はやく異世界にとばしてくれよ!」


「そう焦るな。やり方としてはここにあるゲームソフトを使う。そのゲームソフトの世界にいけるわけだ。一番得意なゲームはなんだ?」


「おお!なんでもいいのか!?じゃあこれだ!聞いて驚け!俺はこの死にゲーのタイムアタック動画をだして少しの間ネットで有名になったんだぜ!」


「わかった。じゃあがんばれよ人間。」


熱くなった俺に人差し指を向ける天使。

その指が発光し、どこぞのせえるすマンのような怪しげな雰囲気を感じとる。その瞬間。


「ドーーーーーーン!」


天使が叫ぶ。身体中が発光していく。


「おわぁ!?おおおおおお!?!???なんだこりゃーーー!?」


熱気と寒気、吐き気、高揚感、いろんな変化が起こった。


次の瞬間、俺は謎の暗い檻の中にいた。


「こ、ここはまさか…」


初めての異世界転生というものに感動をしていると、ポンッという音ともに天使があらわれた。


「ここがお前の大好きなゲームの世界だ。」


驚きだった。ここから俺の大冒険がはじまる。俺の能力はなんだろう。きっとめちゃくちゃ強いはずだ。


「ウォォァァアァ…」


ゾンビのようなうめき声が聞こえた。

まずはここでチュートリアルなはず。

武器はまだないがこのゾンビなら何もしてこないし安心だ。


「いくぜ!俺のセカンドライフ!」


夢にまでみた俺ツエーがここならできる。俺はゾンビへ猛進した。

まず手始めに自分の強さを知るため大きく振りかぶって右パンチを決める!


ドゴォ!!


手応えありだ!


追い討ちをかけるかのごとく左パンチを決める!


ドゴォ!!


手応えありだ!


続けて連打の体制に入る。スタミナゲージがどの程度なのか知るためだ。


「オラオラオラオラオラオラ!!!!」


手応えありだ!


さらに!全然疲れない!これが異世界転生というものか。

目の前のゾンビに連打をあびせつづける!



ドゴドゴドゴッ!!





…あれ?手応えありなのに全然倒れないチュートリアルゾンビ。


「ウォォァァアァ…?」


首を傾げているゾンビ。どういうことだ!?

すると天使が重要なことを口にし出す。


「あ、モチーフだけであってそのゲームのとおりいかないからな。」


「なにぃ!?!?」


驚く俺だが連打はやめない。1ダメージずつでもきっといつかは倒せるからだ。


「オラオラオラ!!おい天使!!こいつのHPって表示できたりすんのか!?」


「ん?ああ、俺様の魔力を使えば余裕だ。」


ゾンビのHPが表示された。

最初の敵のゾンビのHPは


9999999と表示された。


「はぁぁぁ!?!?!?」


するとゾンビは俺の連打を受けながら身体を掻きはじめた。


「カユ…」


とても痒そうにしている!ふざけんな!

いや待てよ!?これはもしやチュートリアルイベントで倒さなくていいやつで攻撃してこないやつでは!?


瞬間!目の前からゾンビが消える!一瞬にして懐にもぐりこまれた!


「速い!!?」


狼狽える俺。

ゾンビはすかさずリバーブローをいれる。


ドゴォ!!!

重い、重すぎる。10メートルぐらいふっとぶ俺。


カスレゆく意識の中で何かゾンビがいっている。


「マタオレ、ナンカヤッチャイマシタ…?」


…オメーが強いのかよ!!!!


目の前が真っ暗になった。






目を開けるといつものゴミ部屋のど真ん中に大の字で寝ていた。

だんだん頭が冴えてくる。そう異世界転生などありえない。馬鹿みたいな夢を見たみたいだ。


「なんだ夢か」


「夢ではない」


すぐ横には小さい天使がいた。

腕を組み、眉毛はつり、なにやら天使は憤っているようだ。


「何勝手に死んでるんだ」


「え?さっき俺死んだの?」


どうやらチュートリアルゾンビにやられたのは現実だったらしい。


「俺様の魔力にも上限がある。命なんてかなり魔力を使うんだぞ?いいか、お前にあたえられるのはあと1ライフのみだ。」


どうやらまだチャンスがあるらしい。

ありがとうよくわからん天使よ。

しかし慎重に選ぶべきだった。というかあんなんで死ぬとは思わなかった。ここは死にゲーではなく、RPGモチーフにするべきだろう。

アクションなんて絶対やめたほうが良い。


「最後のチャンスは、このゲームにする!」


俺は某有名ゲームを手に取って天使に渡した。


「絶対に死ぬなよ?俺様の試験がかかってるんだ。」


ドーンという儀式をやり、視界と意識が消えた。




目を覚ますと、なんだか不気味なBGMが鳴り響いている。

どうやら倒れていたらしい。急いで立ち上がる。


「ファッ!?ここどこ!?」


空は暗く稲妻が走り、瘴気漂う断崖。

見回すと仲間と思わしき魔法使い、僧侶、戦士が倒れている。


「うそ!?!?」


背後からの異様殺気を感じ、ゆっくりと振り返る。


「これで終わりだな。勇者。」


暗雲の中、空を飛ぶ黒龍に跨る、魔王のような存在が見えた。


「おい天使ぃぃぃい!!」


ポンッ


「なんだ?呼んだか?」


「無理だ!早く俺を戻してくれ!」


「なんでだ?」


「俺の勘がいってる!これは!負けイベントだぁぁ!」


叫んだのも束の間、魔王がなんかすごい技を繰り出そうとしている。


すると俺の股間あたりにメッセージの板が現れた。


[勇者は最後の力を振り絞り、自分の力を新たに産まれる違う勇者へと授けるのだった。今、この勇者はダメでもきっといつか、違う世界線の勇者の意思が魔…]


「今ダメなのぉぉぉ!?!?」


魔王から放たれた邪王炎殺拳のような波動。


「おい天使!!はやく俺を戻せえええ!!」


「うるさい!いわれなくとも!!」


天使がすかさず指を発光させる。


「ドーーーー…」


天使が俺にワープさせる光をあてたのと同時だろうか。

地獄の業火が俺に炸裂した。


「ひでぶぇぇーー!!」





目を覚ますと、そこはいつもの天井だった。


「どうなったんだ?」


「貴様の迫力に押され、咄嗟にこっちの世界に戻してしまった。戻したせいでMPがもうほぼない。これは、ゲームオーバーだ。」


お互いに憔悴しきっているのもあるが、明らかに天使のテンションが低い。たしか試験とか言ってたか。


もうだめだとわかると急に反省しだすのが人間だ。

ゲームチョイスの馬鹿さ加減に、怒りがこみあげてきた。



「くそっ!くそっ!!なんで俺は戦うゲームにしたんだ!死ぬに決まってるじゃないか!!」


今なら確実に違うゲームに選ぶだろう。そうだ。オレツエーができる異世界転生ばかりじゃないんだ。これが現実だ。


俺が自責の念にかられていると天使が小さな声で提案してきた。


「転生する魔力ぐらいは残っている。」


転生させてもらえる可能性を知り俺は浮上した。


「よかった!じゃあさっそく…」


「だがライフをやれん。」


「え?」


いままでにない真剣な顔をしている天使。言葉を続ける。


「転生先で死んだら、貴様の人生もろとも終わりだ。それでもやるか?」


次選んだゲームにもし死ぬ要素があれば終わり。だが、現実世界にいても何も楽しいことはない。


「つまらない人生のまま死にたくない。やらせてくれ!」


さらに言えば勝算がないわけじゃなかった。

ゲームチョイスさえしっかりすれば死なない。


「そう。ここにいく!!」


俺が最後の望みをかけたのは、


ジャンル!シミュレーションだ!


「おい人間、ほんとにいいんだな?貴様はこのゲームの世界で一生を過ごす。」


「ああ、なんならゾンビにやられた死にゲーに行く時だってその覚悟だったぜ。」


「よしわかった。いくぞ。」



ドーーーーーーンという声と共に体が発光する。


「いくぜ!三度目の正直だ!!」





目覚めるとそこは、住宅街の路地だった。


ポンッ

天使が現れた。


「絶対死ぬなよ。貴様が死んだらきっと俺様も罰せられて地獄行きだ。戻る方法は1つ。ゲームクリアすること。クリア条件がわからんがな。」


天使には悪いが正直なところ現実に帰るつもりはない。

この世界が俺のラストエデン。

ありがとう天使よ。


「しかしこれからどこ行けばいいんだ?」


俺の服装は制服。学校に行けばいいのか?


と、色々考えていると


なぜだろう目の前にある曲がり角がとても気になる。

なぜか自然に体がそっちへと動きだす。


「おわ??おわわわ??なんだこれ!?体が勝手に!」


タッタッタッタッ。


すると曲がり角の先から足音が聞こえてきた。


「ま、まさかこの展開は!?」


ゴーン!!!!


「いったぁ〜〜いよ〜!」


可愛い声がした。

目の前に倒れている美少女。


恐る恐る声をかけてみる。


「もしかして、遅刻…ですか?」


「うー、ぶつかったんだから謝りなよね!」


「ご、ごめん」


「もーー遅刻しちゃうよぉ!」


「あ、やっぱり?」


「やっぱりってなに!?変な人だね!」


そう言いながら女の子はカバンを持ち走り去っていった。

目の前にはトーストが落ちている。


「これやっぱあれだよな。ついていくしかない。」


女の子を追いかけていくことにした。

まるで見覚えがない街並み。

すると学校が見えてきた。女の子は足早に、校内に入っていった。


ポンッ


「おい人間。ここはなんだ?いままでと全然雰囲気が違うが。」


「うふ、ふふふふふふふふふ。」


今俺はもーれつに興奮している。

なぜなら。


「この世界が!ギャルゲーだからだ!デュフフフ!!!」


「き、気持ち悪いぞ人間!なんだその顔は!」


「ありがとう天使!」


そんなやりとりを校門前でしていると1人の先生らしき人がこちらへやってきた。


「おお!君か、転校生というのは。早く来なさい。」


「ですよね!?」


「で、ですよね?」


もうあらゆる妄想が止まらない。食い気味で話してしまうぐらいに。

先生らしき人もひいている。


「ま。まぁいい。君はたしか2年C組に入る子だね?」


「!?俺は2年なのか!青春だーー!!」


「う、うんそうだな。そしてー、《名前》はなんというんだい?」


「!?」


こ、これは名前入力ってことか!

名前は明日人あすとでいいが、苗字を変える!

俺はこの世界で新しい人生をやりなおす!


そう、しん 明日人あすとだ!!!


正直某ロボットアニメの続編にでてくる運命的な名前と似ている気もするが一文字違い!待ってろ俺のル◯マリア!


「そうか、君は《シン アスト》というんだね。よろしくね。」


「はい!よろしくお願いします!」


「では案内しよう。ついてきなさい。」



ごくごくありふれた校内。魔法学校や忍者学校ぐらいは危惧していたが、まるでない。平凡な学校。

よし!死ぬ要素がない!


「ここが2年C組だよ。呼び込むからちょっとまっててね。」


先に先生が入り、生徒たちに説明しだした。


「今日から転校生がきます。一人遅刻してきた子もいるようですが、今日は目をつぶりましょう。明日から気をつけてくださいね。」


「はぁい、先生すみませんだよ」


この遅刻した子って絶対あの子だろ!?

そして俺が入れば必ずあの言葉がでるはず!


先生が声をかけてきた。


「さぁ、はいって、新くん」


「はい!」


ドアをあけ堂々とはいる。

すると可愛らしい声が教室に響いた。


「あ〜〜〜〜っ!!」


きた!ルートはいったぁ!!

声のするほうを向くと、そこには先程ぶつかった女の子がいた。


「さっきボクがぶつかった人だよぉ!」


なるほどボクっ娘か!

可愛いなぁ!この子と恋愛するってことかな!?


すると先生がテンプレなのかもしれないことを言った。


「なんだもう会っていたのかい?」


「はい!ちょっとぶつかってしまいまして…!あ!僕の名前はシンアストです!趣味はゲームをすることです!よろしくお願いします!」


と、簡潔にあいさつをすませると先生がおいうちテンプレをはさむ。


「それはちょうどいい。あの子が鈴音すずおとさんで、その横の席が空いている。そこに座ってね。」


「ええ〜〜?」


露骨に嫌そうな顔するヒロイン。ういやつういやつ。

ここから絶対仲良くなってやるぜ!

鼻息を抑えながら美少女の横に着席する。


「新だ。さっきはごめんな。よろしく!」


「うーー。まだボク許してないよ。でもよろしくね。」





そうこの時はまだ希望に満ち溢れていたんだ。

何せこの世界はゲーム通りにいかない。

どこか設定がぶっ壊れているからだ。


この3度目の転生がどうなるのか。


まだまだ話は続く。

読みたい方が少しでもいればどんどん続けたいと思います。よろしくお願いします。

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