2020/02/05『学校』『暴食』『少年』
――市立風波小学校、二年一組の教室にて。
「進君……ちゃんとご飯食べてますか? ご飯、食べさせてますか?」
私がそう言うと、目の前の女性は目を丸くした。
「食べてます。学校で全然食べてないんじゃないかって疑いたくなるくらいには……」
――まさか、お互いに同じことを言おうとしていたなんて。
「実は学校でも、かなりの量を食べてるんですよ。毎日お代わりは当たり前で、スピードも速いです」
「うちでもそうなんです。それに、お代わりはもうないよって言うと、駄々をこね初めて……」
はぁ、と進君のお母さんはため息をついた。
「実は、今までも同じことを言われてきたんです。前の担任の先生にも、幼稚園の先生にも」
「そ、そうなんですか……」
もう、どうしたらいいんでしょう……というお母さんに、私は何も言えない。どうしたらいいのかなんて、私が訊きたいぐらいなのだ。
私が唯一できることは。
「――ひとまず、この話は一旦置いておいて、成績の話をしましょうか」
「え、ええ。そうですね……」
話を逸らすことくらいだ。
――彼女との十五分間の面談は、まだまだ始まったばかりである。




