2020/02/02『辛い』『コーヒー』『強欲』
コーヒーのいい香りが漂うダイニングキッチン。
少し遅めのおやつを食べている女性のもとに、一人の少女が駆け寄ってくる。
「ママー、ただいま!」
「あら、お帰りなさい」
少女は机の上にあるクッキーをパクリ。
そのクッキーは、女性が自分のおやつ用にと出したもので、少女の分は別にちゃんとあった。
でも、女性は何も注意しない。それが、当たり前のようだった。
「ママ、あのねあのね! きょうはいいことがあったの!」
「あら、何があったの?」
そのうち、机の上のクッキーがなくなると、女性は少女の分を取り出して、すべて与えた。自分は一枚も食べない。
「じゃーん! これ、お友達がくれたの!」
少女が取り出したのは、可愛らしいペン。最近販売が開始された、新商品だ。
「あら、よかったわね!」
女性は自分のことのように喜ぶが、そのペンは「友達にもらった」もののではなく、「友達から奪った」ものであることを知らない。
そして、自分の子供が「友達から大切なものを奪ってばかりいる」ことを知らないまま、大切なものを奪われた友達の辛さも知らぬまま、昔も今も、これからも、自分の子供が「友達からたくさんの贈り物をもらう、幸せな子」と思い続けることとなる。
自分の娘が、本当の意味で「もらう」という言葉を理解していないということも、分からないまま。




