89/430
2019/12/22『節制』『強固』『高層』
更新は日付を超えましたが、書き終わったのはこの日のうちなのでお許しください。
「多くを望まないことよ。そうすれば、あなたは誰からも尊敬されるような素晴らしい人になれるから」
いつだったかに、母に言われた言葉。それが、今になっても、僕のことを強固に縛り付けている。
母の言葉は正しかったのか、僕には色々なチャンスが訪れた。けれど、そのほとんどを断ってしまっている。
なぜって、あの言葉が僕から欲を奪い去ったから。
本当は分かっている。全ての欲を失ったら僕はただの生きる屍になってしまうと。多くを望まないことと、何も望まないことは決して同じではないことも。
けれど、どうしてもあの言葉が離れない。
だから僕は、こんなところにいるのだ。
高層ビルの屋上、その縁に。
僕がここにいるのは、あの言葉を永遠に忘れるためか、あるいは生きる欲さえ失ったからか。
分からないけれど、そんなことはどうでもいい。
——落ちる。




