2019/12/18『酸っぱい』『災難』『王国』
それは、神様からの贈り物だったのかもしれない。
数多くの災難を乗り越えて行かねばならぬ人への、哀れみか、愛か。あるいはその両方か。
あるとき突然、一つの王国につき一本、不思議な木が現れた。
その木は年に一度、沢山の実をつけた。
小さな小さな、黄色い実。
丸くて可愛らしく、美味しそうな実。
何人かはそれを口にした。
弾けるような、酸っぱい味が広がった。
その時、人は力を得た。
たった一つだけの、魔法の力。
大きな代償のかわりに、大きな恵みをもたらす力を。
いつしか、力持つものと人を分けるようになった。
女の力持つものは「魔女」、男の力持つものは「魔法使い」。
そして力無きものは「人間」と。
ある時、人間は力持つものを恐れた。
不思議な木の実を、代償によって得られる魔法を。
「力持つものはいつか人間を滅ぼす」
「強力な魔法で人間を消し去るつもりだ」
「力持つものを殺せ」
「殺してしまえ」
根も葉もない噂が流れ、罪なき血が大量に流れた。
「力持つものを生み出してはいけない」
「あの木を倒せ」
黄色い実をつける、王国にたった一本の木を切り倒した。
力持つものは数を減らし、そしていつしか、消えていた。
今ではほとんど、力持つものはいないという。
日付が超えてからの投稿となってしまいました。
今日(12/19)は今日のテーマで投稿する予定ですので、しばらくお待ちください。




