2019/12/17『過去』『緑』『菓子』
「これ、あげるわ」
お母さんがくれたのは、緑の容器、粒々ラムネ。
「甘いから沢山食べたくても、一日五粒まで。約束よ。空になったらあげるから」
僕はカリカリ、ラムネを食べる。
甘くて美味しい、白い粒々。
一日五粒まで、カリカリポリポリ。
大きくなって、お小遣いもらった。
僕は友達と、駄菓子屋さんへ。
そこでラムネを、見つけたんだ。
「あ、そういえば、そろそろなくなる」
お母さんに言えばもらえるけど、たまには自分で買ってみよう。
「これください」
蓋を開けて、ラムネをカリポリ。
あれれ、味がなんだか違う。
甘いんだけど、いつものやつは、もっとこってりした味だ。
でもこれはあっさり甘い味。
同じ入れ物。なのに違う。
不思議、不思議。
僕はこっちが好きだなぁ。
お母さんから、ラムネをもらわなくなった。
自分で買って、カリカリポリポリ。
そんなある日、ふと思い出す。
知らない声を、女の人を。
あの人はだあれ。あれはママ。
——あれ、今、僕は、なんて言った?
あの人はママ。嘘だ嘘だ。
だってお母さんが、ちゃんといる。
眠れない夜。
布団をかぶって、寝たふりしてた。
同じ部屋で寝るお母さんが、ぽつりと呟く。
あの子がラムネをもらいにこない。
お菓子じゃないのに。
あれは薬。
本当の親を忘れさせるため、不都合な記憶を消すための、薬なのに。
——お母さんは、嘘つきだった。




