2019/10/17『傲慢』『ガラス』『砂漠』
これは、異世界『おとぎの国』に存在する、砂漠の国『リローン』で語り継がれる物語。
その物語の名は『ガラスのお城』。
さあ、はじまり はじまり——。
昔、リローンがまだその名を持たない、小さな小さな街だった頃。
その小さな砂漠の街に、グラガ・スラスという一人の男が住んでいました。
彼は元々、近隣の王国で王様の側近として働いていました。しかしある日、その地位を狙った人物により、裏切りを受けて信用を失い、国を追い出されて来たのでした。
グラガはたくさんのものを失いました。しかし、一つだけ残っていたものがありました。
それは、今まで稼いできたお金でした。
そこで、彼はそのお金でガラスのお城を作りました。
オアシスのそばに作ったので、水に困ることはありません。トイレやお風呂は念のために地下に作らせました。珍しい色付きのガラスや曇りガラス、もちろん透明なガラスもたくさん使います。
そうして出来上がったお城は、とても美しいものでした。全ての部屋にカーテンをつけさせましたので、それさえ閉めれば中の様子は分からないようになっています。
そんなお城を作ってみせたグラガに、砂漠の街に住む人々は目を丸くしました。
「こんなお城を作れるなんて。この人はとても偉い人に違いない」
そう思った街の人たちはやがて、彼のことをこの街の王様と呼び始めました。
さて、今度はグラガが目を丸くする番です。
どうしようか、と彼は考えます。
かつて王様の手伝いをしていましたから、どう政治をすればいいかは分かっています。街の人々は自分に期待を寄せています。これならば、本当に自分は王様になれるのではないか、と思ったのです。
彼は決めました。
「よし、皆が王と呼ぶならなってやろうじゃないか、この国の王に」
そして、彼は人々の前でこの街に『リローン』という名をつけること、そして自分が王であることを宣言しました。
これが、この国の始まりなのです。
しかし、グラガはだんだんと独裁的な政治をするようになっていきました。あまりにも国民が彼を称え続けたため、何でも思い通りになると思い上がってしまったのです。
そんなグラガを見放したのでしょうか。
ある夜、リローンで地震が起こりました。
ガラスのお城に地震が襲い掛かったらどうなるか……もうお分かりですね?
お城の中の家具が倒れ、その衝撃でガラスが割れ、お城は粉々になってしまったのです。
その時お城の中で一人眠っていたグラガはもちろん、亡くなりました。
国の人々は、神がグラガに天罰を与えたのだと噂しあったそうですよ。




