2019/10/09『暮らし』『天邪鬼』『苦い』
これだけ長く、一緒に暮らしているのに、気付かない。
僕が天邪鬼なんだってことに。
例えば、晩ご飯。君が手料理を作ってくれた時。
君は『どう?』って目を輝かせながら訊いてきたんだ。多分、僕が『美味しいよ』って言うのを期待して。
もちろん、君の料理は美味しかったんだ。
でも、僕は『焦げてて苦い』なんて言っちゃったんだ。実際ちょっと焦げはあったけど、美味しかったのにさ。それを素直に言えなかったんだ。
例えば、土曜日の夜。翌日の外出先を決める時。
君は『水族館に行きたい』って言ったんだ。君はイルカやペンギンなんかの、海辺の動物が好きだから。
もちろん、僕もそれもアリかなって思った。
でも、僕は『動物園がいい』って言っちゃったんだ。いや、僕は正直像やキリンの方が好きだけど、でも水族館もいいなぁって、そう思っていたはずなのに。
毎日の暮らしの中で、僕は何度も期待を裏切ったはずなのに。
裏切って裏切って、悲しい思いをさせたはずなのに。
なのに君は僕を見て笑う。そしていつも、こう言うんだ。
「私、貴方と過ごせて本当に幸せ。いつもありがとう」
ああ、いつか僕が君に、天邪鬼であることを告げる時が来るなら。
来るなら、僕は伝えたい。
「こんな天邪鬼な僕を、好きになってくれてありがとう」




