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2019/06/14『正義』『現実』『天災』

 正義という名の剣を振るう男がいた。

 男は「正義」のためなら、なんでもしていいと思っていた。

 自分の中の「正義」を壊す者が現れようものなら、その者は「悪」とみなされた。

 そして、「悪」を滅ぼそうとした。

 ありとあらゆるところで、彼はそうした。

 会社でも、家でも、親戚の集まりでも、近所づきあいでも、リアルだけでなくネット上でも。

 彼はそのうち、嫌われるようになった。

 しかし、彼はそのことに気付かなかったし、もし自分を嫌っている人がいると知ったなら、その人を「悪」として滅ぼしにかかっていただろう。


 そんな者のことを、神様はちゃんと見ているらしかった。


 ある日、唐突に大きな地震が起こり、人々を襲った。彼の家も同様だった。

 彼の家族は助かったが、彼は瓦礫の中に埋もれた。彼は助けを求めたが、家族は彼が埋もれていることに気付かずに避難してしまい、周りの人々も同様だった。海辺の街だったので、早く高台に行かないと危ないというのもあったかもしれない。

 いや、家族も周りの人々も彼を嫌っていたから、わざと置き去りにしたのかもしれなかった。これは神様が彼に与えた罰なのだと、そう言い訳して自分の命を優先させ、見て見ぬ振りをしたのかもしれなかった。


 彼はこの時になってようやく、周りに嫌われているという現実に気付いた。

 ——どうして。どうして俺が嫌われる?

 ——俺は正義を成しただけなのに。

 そう彼は思いながら、とうとう力尽き、生き絶えた。

 自らの過ちに、犯した罪には気付かなかった。

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