2019/06/07『受難』『科学』『妖精』
昔々のこと。
人間は、妖精と共に暮らしていた。
人間は妖精を見ることが出来たし、妖精は魔法を使うことが出来た。
妖精は魔法を使って、人間を助けた。
人間は妖精を信じ、魔法の力を与えた。
人間も妖精も、幸せだった。
しかし、ある時から人間は変わった。
自らの手で幸せになれるようにと技術を身につけた。
それの名は、科学。
科学技術を手に入れた人間は、いつしか妖精を信じなくなった。
妖精の力は、信じる力。
妖精の存在を、魔法を信じてもらえないなら、妖精は衰え消えていく。
妖精の姿は、人間には見えなくなった。
妖精は魔法を操れなくなっていった。
そして少しずつ数を減らし、今ではもう、ほとんどいない。
子供の目に妖精が見えるのは、子供は妖精を信じる力が強いから。
大人の目に妖精が見えないのは、大人は妖精を信じないから。
そう考えれば、色々辻褄があう。
子供の前にばかり妖精が現れるのも。
子供の頃、妖精に出会ったことがある人も、大人になればそれを信じなくなることも。
もしあなたが妖精を信じるならば、妖精はあなたの目の前に現れて、あなたの信じる力を受け取り、それを魔法へと変えて、あなたに見せてくれるかもしれない。




