2019/06/06『空白』『太陽』『旅』
「空のない国」と呼ばれる国があった。
その国では、いつでも白い雲が空を全て覆い隠していた。かと言って、その雲は雨を呼ぶわけではない。ただ、太陽を隠すだけ。
その国はなにも育たない国になった。
なにも育たなければ、食べるものもなくなる。
雨が降らないので、飲むものもなくなる。
食べるものも飲むものもなければ、人はいなくなる。
そのうち、その国は草木も枯れ、建物も朽ち果て、やがて「空白の国」と呼ばれるようになった。
空のない国、またの名を空白の国と、そう呼ばれる国の上にいた雲たちは、わいわいと騒ぎ出した。
「なにも育たなくなった」
「水もなくなった」
「人がいなくなってしまったよ」
「建物もみんな朽ち果ててしまったよ」
「あんなに綺麗な街だったのに、なんでだろう」
空のない国は、元々は大量の雲などなく、草木が生い茂り、美しい花が咲き、澄み切った水があり、人々が皆幸せに暮らしていた、そんな街だった。
しかし、そんな街を、とある雲の一行が気に入ってしまい、その場にとどまってしまった。
その結果、空のない国、空白の国と呼ばれるようになってしまったのだ。
雲たちは、自分たちが国を滅ぼしてしまったことを、知らない。
「こんな国はもう嫌だ」
「また旅に出よう」
「そして素敵な街を見つけよう」
「そうしよう」
そして、雲は旅に出た。
次に空のない国と呼ばれるのは、空白の国と呼ばれる国は、どこになるのだろう。
それはまだ、誰も知らない。




