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2019/06/02『絶望』『本』『人肌』

 これは、とある罪を犯した、鳥の話。


 その鳥は、他のどの鳥よりも賢い鳥だった。

 そのため、その鳥は神様に仕えることとなった。

 仕える神の名は、天ノ神(そらのかみ)。沢山いる神様の中でも、一番力を持つ神様だった。

 鳥に課された仕事は、天ノ神への捧げ物を、地上から天ノ神のもとへと運ぶことだった。そのため、鳥は二つの力を与えられた。

 一つは、人に姿を変える力。もう一つは、不老不死となる力だった。


 天ノ神は、とても優しい神だった。

 捧げ物を運んできた鳥に、天ノ神はその頭を撫でた。全ての命を慈しむその手は、暖かかった。


 鳥は捧げ物を受け取る時は人の姿をとった。

 捧げ物を運ぶ鳥に、生き物は感謝しその手を握った。感謝の気持ちは、鳥の心を満たした。


 しかしながら、そんな日々が続くと飽きがくるものだ。鳥は無限に続くこの日々が、心底嫌になり始めた。

 どうしたらこの日々を終わらせることができるだろう。鳥は、たくさんの書物を読み漁った。

 そして、鳥は捧げ物の中に猛毒を仕込むことを思いついた。神とはいえど、強力な毒であれば力を失うのでは、もしかしたら死ぬのではないかと思ったのだ。


 鳥は世界中から猛毒を集め、それを混ぜ合わせ、丸め、毒を持つ赤い花びらを煮詰めて作った汁でコーティングした。そして木の実にみせかけ、捧げ物に紛れ込ませたのだ。


 作戦は、成功してしまった。

 天ノ神は泡を吹いて倒れ、長い間寝込んでしまった。そしてそのせいで、生き物は「神に願っても何も叶えてもらえない」と思い込み、絶望した。本当は、「神に願っても、神が倒れているため願いは叶わない」だったのに。生き物は「神はいないのだ」と思ってしまった。今では神の存在を信じない生き物も多い。

 神と生き物の信頼関係は、崩れた。

 生き物が神を信じる、その祈りの力が神の力になったのに、生き物が神を信じなくなった。

 その先にあるのは、神の衰退。

 鳥はようやく、自らが犯した罪を悟った。


 鳥は、後悔した。

 自分で招いてしまった事態をどうにかしなければという思いと、罪滅ぼしをしたいという思いが重なり、鳥は不老不死であることと人間に姿を変えられることを生かし、人間の街に混ざり込んではこの話を語った。そして、神を信じてほしい、その力が神の力になるのだからと、そう語っているという。


 もしかしたら、あなたの住む街にも、鳥は人間となって混ざり込んでいるかもしれない。

昨日は更新できずすみません……。

今回は前回の三題噺を別視点で見たような小説にしてみました。

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