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2019/05/28『戸惑い』『希望』『色欲』
「子供が欲しいね」
唐突に、あなたは言った。
「……そうね」
驚いたけれど、子供が欲しいのは私もだった。
「男の子と、女の子、どっちがいい?」
「うーん、男の子と女の子の、双子」
「欲張りね」
私がそう言うと、あなたは笑う。
「欲張りでもいいだろ? 実際はどっちが生まれるか分からないけどさ」
「ま、そうね」
私も、笑った。
その時、あなたは不意に立ち上がると、電気を消した。瞬時に暗闇が襲いかかってきて、思わず声を上げてしまう。
あなたがベッドに腰掛けたのが、気配で分かった。
「おいでよ」
あなたは私を呼んだ。けれど、私の頭は戸惑いでいっぱいだ。
いつまでも動かない私に、あなたは立った。
近付いてきて、私の手を取ると、そのままベッドに引きずり込む。
心臓が早鐘を打っている。
「——最後に訊くけど、本当に、子供が欲しい?」
あなたの声は、真剣そのもの。
私は答える代わりに、あなたに口づけをした。
——生まれた子供は、男の子と女の子の、双子だった。




