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2024/02/18『退廃』『童話』『人肌』

 乾いた風が、吹き抜けた。

 空気は冷たく皮膚を刺し、ボロしか纏っていない身にひどく堪える。

 辺り一面は荒野。少し前までは家があり、街があったはずのこの場所に、命の気配は感じない。

 食べ物はない。水は、かろうじて井戸があるものの、味も匂いも酷くて飲めたものではない。

 退廃という言葉がよく似合うこの街で、わたしは誰にも救われることなく、そして大切な人と一緒に死ぬこともできず、ひとりきり。

 とうとう飢えで力尽き、大切な人たちと再会できる――なんておとぎ話はやってこない。悲しいほどに、人はしぶとい。簡単には死なないのだ。


 死なない、けれど。

 生きている気もしない。


 朝と夜の繰り返しを、ただ眺めるだけ。

 人肌の温もりはもう、忘れてしまった。

 動くことも話すこともなくなってしまった今、どうして生きているのか、なんのためにここにいるのかも分からない。

 どうして、この街が壊れた時にわたしも死ねなかったのだろう。


 どうか、いっそのこと。

 この世界から消えてしまいたい。


 ――大切な人たちに、会わせてください。

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