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2023/06/06『少女』『ベッド』『過去』
こんな夢を見た。
幼い少女が、赤いリュックを背負って駆けていく。少女の前には手を差し伸べてくれる人がいて、少女の進むべき道を切り開いていってくれる。
少女とその人は、一緒に虹を描く。少女が叶えたい夢を口にしたなら、その人は夢を叶えるための地図を書いてくれる。その人は、少女の経験した喜びを、悲しみを、怒りを、幸せを、全て一緒に分かち合ってくれる。
そして、少女は光に向かって笑顔で駆けていく。
そんな、夢だった。
目が覚めて、ベットの上で気付いてしまうのに。
――私に、そんな過去などなかったことに。
親は私に興味を持たなかった。
友人は私のことを傷つけた。
先生は私を腫物扱いした。
ご近所は私を嘲笑った。
私は、私自身で茨の道を切り開いて、光のない地獄を歩んだ。そして今、大人になって、ようやくその地獄から逃れたと思ったのに、私の目は光も虹も見つけられなくなっていた。
――あの夢が、正夢だったらよかったのに。
そんな絶望を抱く私を、冷たい朝日が照らしていた。
2023/06/07 0:02
誤字があったので修正しました。




