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2021/12/18『コーヒー』『理想』『強固』

「あ、チョコよければどうぞ」

 仕事終わり、同じ時間に上がる人たちに、たまたま持っていたチョコレートを配っていた。バイトの子、社員の仲間、分け隔てなく。

 なんとなく、気分と言ってはなんだけど。ただの自己満足なんだろうけど。でも、お疲れ様、の気持ちを共有したくて。それで、よくお菓子を渡している。

「あ、店長さんも食べますか?」

「いや、俺はこのあとビールが待ってるから」

 すぐ隣で荷物の整理をしていた店長さんは、そう言ってマスクをしていても分かるくらいに、深い笑みを浮かべた。

「ほぼ人がいない電車の中で飲む缶ビールは、誰に何を言われようと至福なんだよ」

 その強固な思いを揺るがすことはきっとできないだろうな、と思う。……にしても。

「いいですね、羨ましいです!」

 店長さんのその行動は、私にとって、ちょっと理想みたいなものだったりする。やってみたいけれど、叶わない。というのも、私の使っている電車の路線は、店長さんの使うものとは違って夜でも混雑しているのだ。電車内でお酒を飲もうものなら……うう、ちょっと想像したくない。

 今日のご褒美のお酒は、しばらくお預けである。

 ぱくり、と。渡し損ねたコーヒー味のチョコレートを口に放り込む。

 ほろ苦くて甘いそのお菓子は、口の中から消えるまでの短い間、私を幸せにしてくれた。

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