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2021/11/06『リアル』『恋人』『怠惰』

 ねぇ、私はあなたに期待していいの?

 私は、あなたのことを好きなままでいいの?

 私たちは、恋人のままでいられるの?

 ――そんな問いを投げかけたかった。

 だって、あなたは私のことを見ていないし、知ろうともしてくれない。恋人未満の存在として扱われている気がしてならないんだもの。

 私がいくら頑張って二人の間に横たわる境界線を越えようとしたって、あなたの心を一生懸命手繰り寄せようとしたって、怠惰な態度を取るあなたは近寄ってきてくれない。そして、あなたが近づいてくれなければ、私はあなたの心を知ることができない。

 あなたへと続く道を、あなた自身が塞いでいるようなものなのに、それにすら気づいていないみたい。

 ……知らないでしょうね。私がこんなことを考えていることなんて。

 いつでもあなたの前では笑顔を見せているものだから、私の本意なんて分からないでしょう。自分の顔に偽物の感情を切り貼りして縫いつけて繕うことだけは、あなたと同居するようになってから上手くなったのよ。

 本当は、ありのままの飾らない私も、大切なものたちで飾った私も、私の中心にあるアイデンティティも、ぜんぶぜんぶ、あなたに認めて欲しい。そして、それも含めて好きだと言って欲しい。そして、私もあなたのありのままを知って、あなたのすべてを好きになりたい。

 だけど、それが長いこと叶わないものだから、私までそれを投げ出したくなってしまうのよ。

 ねえ、もし私があなたの恋人をやめるふりをしてかくれんぼをしたら、あなたは探しに来てくれるかしら? 憂鬱な気分なとき、その感情を素直に見せたらあなたはどんな反応をするかしら?

 ――なんてね。

 だいたい、想像はついてるわ。

 もし私が実際にそれを行動に移したとして、あなたがどんな表情をして、なにをするのか……私は、リアルに思い浮かべられる。

 まあ、十中八九、私の望む反応ではないでしょうね。

 けれど、それでも。

 私は、あなたを手放すことができない。

 理由なんてあってないようなものかもしれない。こんなふうになっても、まだ私はあなたの心を信じていたいだなんて、そんなことあるわけが――。

 ……。

 …………。

 お互いの顔を見つめあったり、本当の気持ちを吐露したりすることもなく、誤魔化しながら続いているこの関係の未来に、待っているものは。

 分かっている。

 分かっているけれど、今は、見て見ぬ振りで目を閉ざしている。

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