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2021/06/29『星』『童話』『暴力』

「童話と暴力って似合わない気がするけど、童話ってかなり暴力的なんだよなぁ」

「どうしたの、突然」

 唐突な友人の言葉に、目を見開いた。

 帰りの電車内。右隣に座るその子は、ちょっとだけ難しそうな顔をしている。

「いや、最近、図書館で借りた童話集読んでんだけどさ、結構きついなーって思って」

「あー、ね。わりと血生臭いよね。つま先切り落とすとか、小鳥が人の目をくり抜くとか」

 幼い頃に読んだ絵本を思い出す。頭の中に浮かんだのは、熱された鉄の靴を履かされる魔女。美しさを求めた結果、殺人(未遂?)の罰として死ぬまで踊らされた、哀れなヴィラン。

「……ふと思ったんだけどさ」

 私の呟きに、その子は「ん?」と、こちらを向く。

「昔はこう、善悪がはっきりした物語が多いじゃない。でも最近ってさ、そこが曖昧な話が多い気がするんだけど」

「……あー、確かに。悪役として(えが)かれる人物の視点に立った作品も増えたし」

「でしょ?」

 ――ヴィランには、ヴィランになった理由がある。

 ――ヴィランだと思われていた人は、本当はそうではなかった。

 なんか、そういう物語をよく見るのだ。

「ま、言うて私も、最近構想を練ってる話が善悪はっきりしない内容なんだけど」

「そういえば中川さん、小説書くのが趣味なんだっけ。どんな話なの?」

「えーっ……」

 流石にそれを話すのは恥ずかし……う、やられた。

 そういう表情に弱いんだよ、私。興味津々、って感じの顔で言われたら断りづらいじゃん。

「――とある姉妹の話。妹が姉を殺しちゃうんだけど、果たしてヴィランは誰なのか? っていう感じかな、ものすごくざっくりしてるけど」

「え、読みたい!」

 友人は満面の笑みを見せた。それは、そう、まるで星が宿ったみたいに、目を輝かせながら。

「……いつか、書き上がったらね」

 胸の中を満たす、温かく誇らしいなにかに身を委ね、一言、隣の人にそっと返した。

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