2021/05/25『童話』『薬』『雨』
お題の確認が23:53、書き始めたのが23:54。
投稿時には日付が変わってしまいました。申し訳ありません。
――童話じゃあるまいし、どうしてこんなことが。
そんなことを思いながら、つい、空を見上げてしまう。
遠くから降り注ぐ雨を受けながら。
始まりはそう、いつものように薬を飲もうとした時のこと。……というのも、自分はアレルギー性鼻炎持ちのため、毎日朝晩、服薬しなければ、鼻が大惨事になってしまうのだ。
「まあ、薬を飲むのも、もう慣れたけどさ」
ときどき「かわいそう」なんて言われるけれど、そんなことを気にしなくなるくらいには、もう日常の一部になっている。
薬をしまっている戸棚を開く。
しかし、そこに見慣れた薬はなかった。代わりにあったのは、パッケージの異なる錠剤。
「あれ……メーカーが変わったんだっけ?」
同じ薬でも、製薬会社が変わればパッケージが変わるのは当たり前。過去にも何度か変更があったから、あまり気にせずに薬を飲んだ。
それが、間違いだった。
薬を飲んだその瞬間、むくむく、体が膨れ上がり、天井を抜け、屋根を突き破り、頭が外に出てしまった。
「――えっ?」
訳がわからず、混乱し、なにをすることもできないまま。自分が巨大化したらしい、と気づいたとき、途方に暮れて空を見上げてしまった。
――童話じゃあるまいし、どうしてこんなことが。
遠くから降り注ぐ雨を受けながら、そんなことを思った。




