表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
393/430

2021/05/09『メモ』『少女』『怠惰』

 部屋から出てこない少女に、母親は痺れを切らしたらしい。ドンドン、と閉ざされた子供部屋の戸を叩きながら、大声をあげた。

「いつまで大学に行かない気なの? そんなに閉じこもってたらナマケモノになっちゃうわよ。早く出てきなさい!」

 いつの間に、こんなに怠惰な子になったのだろう。

 そんなことを考えながらため息をつく母親の、一枚板を挟んだ、向こう側。

 少女は、パソコンに向かい合ってメモを取りながら一つ息をついた。シャーペンでルーズリーフに記した内容は、『ワークショップ 動物小説 猫』。

『えー、では、今日は、猫が登場する小説の中でも、この作品を取り上げて講義を行おうと思います』

 画面の向こう側には、大学の教授がいる。

『出席を取りますので、名前を呼ばれましたら返事をしてください』

 母親の喚き声に、少女は呆れたように呟いた。

「まったく……オンライン授業に切り替わったって言ってるのに、いつになったら理解してくれるんだか」

『――さん、神崎さん、いませんか?』

「……っ! はい、います」

 慌ててミュート機能を解除して反応した少女に、教授は『ちゃんと聞いていてくださいね』と小言をこぼした。謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、扉の向こうから再び母親の声が響く。

 いつになったら、分かってもらえるんだろう。

 うんざりと、子供部屋のドアを眺めながら。

 少女は一つ、ため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ