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2021/04/21『高層』『正義』『空白』
ほとんどのひとびとは、知らない。
高層ビルや展望タワーよりもさらに上で、街を見下ろす青い目があることを。
金色の髪をなびかせ、空を舞うものがいることを。
ひとを守るため悪魔を倒す、白翼を背負った正義の使者が存在することを。
その使者の名は、天使という。
天使たちの目には、闇が見える。
悪魔の住む、暗く淀んだ場所が。
姿を消した天使は、闇の根源へと舞い降りていく。
ひとのふりをして笑う悪魔を、なにも言わずに指させば、指先から迸る光が、白い炎が、それを焼いて滅ぼした。
けれど、天使は笑わない。
心は空白に近く、胸の中にあるのは使命だけ。
当たり前のことをした、と言いたげな顔で、再び空へと舞い上がる。
淀んだ空気は、いつの間にやら消えていた。




