2021/03/31『強固』『漫画』『神話』
「ねえ、絵を描くのがうまいって聞いたんだけど、ほんと?」
それは、まだ俺が小学生の時の話だ。
隣のクラスの女子が、俺にそう声をかけてきたのが、すべての始まりだった。
「え、あ、まあ、そうだけど」
「ねえ、一緒に漫画かかない? 僕がストーリーを作るから、君が絵を描くの!」
「はあ!?」
初対面の人に誘われて、なにがなんだか分からなかった。
けれど、結局引き受けてしまったのはきっと、俺も漫画を描いてみたかったから、なんだろう。
あれから、何年経っただろうか。
一緒に漫画をかきつづけるうち、俺たちの間には強固な絆が生まれていった。
片方が辛い思いをした時は、もう一方がよき理解者となって支えた。
腹を割って話し、お互いに納得する漫画ができるように、努力し続けてきた。
最初は、クラスで回し読みされる漫画になった。
そして、全く売れない同人誌を売り出して。
けれど何度も売り出し続けるうちに、名を知られ、多くのファンがついて。
いつの間にか俺たちは、プロの漫画家として名をはせるようになっていた。
「さて、次はどんなのがいいかな?」
「神話をモチーフにするのはどう?」
「いや、使いまわされすぎてる題材じゃないか」
「だからこそ、今取り組んでみるんだよ。発想の広げ方で、他との違いを見せつければいいんだ」
「……なるほどな。いばらの道かもしれないが楽しそうだし、まあ、やってみるか!」
プロットとキャラデザ、第一話のラフを見せると、担当者さんは大喜び。
この漫画が今後大人気になり、映画化されることになる――そんな未来を、今の俺たちは、まだ知らない。
今日、『宝箱のタペストリー』は投稿開始から3年となりました。
この話で389話目、文字数では300,000字超えです。
読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます!
2021/03/31 21:56
後書きを修正しました。




