2021/03/20『王国』『絶望』『怠惰』
ここは、わたしだけの、小さな王国。
自分で作った、わたしだけの居場所。
ここには、優しくて温かい人ばかり。
わたしに嫌なことを言う人もいない。
わたしが嫌なことを言う人もいない。
ずっと、ずーっと、このままがいい。
心の中で、わたしは願っていたんだ。
けれどある日、絶望してしまった。
大切な人が嫌なことを言ったから。
しかも、みんなそれに賛成してた。
『いいね』『いいね』『リツイート』
どこまでも言葉は、広まっていく。
その言葉も、行為も、全部すべて。
わたしを傷つける刃になっていた。
もう王国は、なくなってしまった。
わたしの作った、大切な居場所が。
居心地の良いタイムラインは無い。
自分に優しい言葉も、消え去った。
それなら『王様』もいらないかな。
ふと思いついて、スマホを触って。
そっとTwitterからログアウトする。
多分二度と、ログインなどしない。
怠惰な『王』だな、と思うけれど。
先に裏切ったのは『民』の方だ。
ついでにアプリも消してしまおう。
長押ししてから、ばつ印をタップ。
震えるアイコンが、すっと消える。
うんうんと頷いてスマホを置いた。
居心地の悪い王国は亡国になった。
タイムラインを作成する『王』も。
たくさんの呟きも『民』の声も。
今はもうなにもないも同然だった。
見るものがいなければ意味がない。
都合の良い話だけの『王国』は。
『王』の世界を狭め、苦しめたのだ。




