2021/03/06『空白』『人肌』『絶望』
秋になるたびに、思い返す。
あれから、何年経っただろう。
初恋の相手を失った、あの日から。
君の温もりは、今でも覚えている。
ふとしたときに叩かれた肩の感覚も。
人肌恋しい季節に「あら、寒そうね」と手を取られたときの優しさも。
鮮明に、はっきりと、思い出せる。
けれど、別れは突然だった。
ある秋の日に、突然君はいなくなった。
本当に、ただの不慮の事故で。
――電車の人身事故によって亡くなった。
その話を聞いたとき、君の死が信じられなくて。
何度も何度も、幻を聞いたよ。
しまいには君の姿を見たんだ。
そして、その後を追いかけて死のうとすらしたんだよ。
……たまたまそばにいた人に止めてもらえたから、まだこうやって生きているけれど。
多分、君のいない世界に絶望したんだ。
受け入れたくても、受け入れられない日々が続いた。
この世界に慣れるまで、時間がかかってしまったよ。
そして、今でも心にあいた穴を持て余している。
今でも、君に会いたいんだ。
そして、言葉を交わしたい。
君の笑顔を、もう一度見たい。
でも、それは叶わない。
君がいたところにできた空白は、埋まらない。
それくらい、君の存在は大きなものだったんだ。
君が亡くなったあの日に、この花を贈ろう。
君が大好きだった、秋に咲く花を。
君がこの世界から消えた、あの場所で。
……もういない君に、会いにいくよ。
だから、あそこで待っていて。




