2021/01/02『会社』『星』『甘い』
星を見上げながら、会社帰りに甘いものを食べる。
それが、私の幸せ。
かさり。
細長い箱から赤く小さな包みを出して、それを開ければ現れる、赤と白のマーブル模様。
冬季限定の、口溶けの良いチョコレートだ。
ぱくり。
口に放り込めば、熱でとろりと溶けて、私を幸せへと誘う。自然と上がる口角と下がる目尻が、そのことをはっきりと教えてくれる。
「――ふふ、美味しい」
仕事の疲れも、幸せが中和してくれた。
家の最寄駅から、歩く、歩く。
海岸沿いを歩けば、寒さとともに、潮の香りが鼻をつんと刺してきた。
田舎の街だから、夜になるとバスがなくなる。
寒空の下、家まで徒歩で帰るしかない。
けれど、甘いものを口にしていると、お酒を飲んだわけでもないのに足取りが軽くなる。
それに、冬の空は綺麗だから。
ふと見上げれば、そこには数多の星屑。
「――この街に住んでてよかった」
明かりが少ない海岸線。地上の光にかき消されることなく、宇宙の光が私まで届く特等席。
波の音、風の音。
綺麗なものは、心をある程度癒してくれる。
安らぎのひとときを与えてくれる。
「――ああ、幸せだなぁ」
呟きは、風にさらわれて消えていった。




