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2021/01/01『真実』『犯罪』『都市』

「黄疸? 大丈夫? ……でも顔は黄色くないね」

 私の黄色い手を見た保健の先生は、慌てた様子で言ってきた。

「あー、たぶんみかんのせいですよ」

「え?」

 ぽかんと呆気にとられたような顔をしている先生に、笑って答えた。

「毎日のようにみかん食べてるんで、多分そのせいです」

 みかんの皮を毎日むき続けた結果、手にみかんの色がうつってしまった。それが真実だ。きっと。

「ほんとに大丈夫? なにかおかしなところがあったらすぐ病院行くんだよー!」

「はあい」

 黄色に染まった手を眺めながら、考える。

 ……本当に最近は、甘いものがないとストレスが溜まってやっていられない。

 みかんだって一日に三つ四つと食べてしまい、親や姉に「食べすぎ!」と怒られた。姉の鞄に入っているチョコや飴をこそっとくすねて食べたりすることもあるけれど、大体ばれて怒られる。姉がシスコンで姉妹仲良しだから、大体最後には笑って許してもらえるのだけど、もし他人にやったらただの犯罪行為だよなあ、とは思っている。――え? 姉のものを取ってる時点で泥棒と一緒だって? そんなん分かってるから!

 ――はあ。

 思わず、ため息を一つ。

 私だって、甘いものの食べ過ぎはよくないっていうのは分かってる。物は無限にあるわけじゃないし、ずっと食べてばかりじゃ太っちゃうし。

 ストレスの原因を減らせればいいのかもしれないけど、それはできない。何故って、ストレスの原因は、逃げようのない、大っ嫌いな勉強だから。

「……でもなあ」

「ん? どうしたの?」

 唐突な私の独り言に、保健の先生は首を傾げる。

「あ、なんでもないんです。高校受験頑張って、早くこの街を出たいなあ、って思って。大きな都市に出るの、私の夢なんです」

「そっかそっか。でも根を詰めすぎちゃだめだよー。辛い時はいつでもここに来ていいんだからね」

「ありがとうございます、先生」

 中学校の、昼休み。保健室で先生と談笑するうちに、ゆるやかに時は過ぎて行った。

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