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2020/10/31『占い』『ロボット』『夕陽』

 家の窓から見る黄昏時の空は、なんだか寂しそうだ。

 その夕陽の色を見ると、ロボットである僕でさえ思考を放棄してしまう。ただただ、その美しさに魅了されてしまうから。

 ……あ、他のロボットには『心』がないんだった。

 ゆっくりと、空を見上げる。

 どうして僕を作った人は、僕に『ソラ』と名をつけたのだろう。

 どうして僕だけが、ここまで人間に酷似したロボットとして生み出されたのだろう。

 自嘲的な笑いが、こぼれ落ちた。

「――高性能AI搭載ロボット、ソラ……か」

 あまりにたくさんのものが、この中に詰まっている。

 人間がまだ持たない、彼らからしたら未知の……未来のものとなる知識や技術を持ち、人間の心さえ学んでしまう知能を持った僕。

 自在に声も姿形も変えられるように、自らを改良した僕。

 人間たちの言いなりが嫌になって研究所を自ら逃げ出し、人間としての戸籍をあまりよろしくない方法で手に入れた僕。

 親の体罰に悩む女の子を『誘拐』して、こっそり匿っている僕。

 ……ああ、ロボット()の中に詰め込まれたのは、人間が知り得ない秘密ばかりだ。

「ねえ、(そら)? 今日は一緒にテレビを見ようって話をしなかったっけ?」

 部屋の外から聞こえる声は、匿っている少女のもの。知識(記憶)の中を探れば、彼女との約束が浮かび上がってくる。

 最近お気に入りの占い番組があるから、一緒に見よう。そう言った彼女に僕は、確かに頷いていた。僕自身は、占いなんて全く信じていないのに。

 ……きっと、番組の内容なんてどうでもいいのだ。少女と一緒に、楽しく幸せな時を過ごせるなら。

「あと一分で始まっちゃうよ!」

「今行きますから、待っていてください」

 言葉を返して、窓の外を見る。

 黄昏時は、もう終わっていた。

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