2020/10/25『赤』『本』『辛い』
赤いラベルに、杖をついた男性が歩くシルエットがシンボルマークの、ウイスキー。
コンビニで探せば、すぐに見つかった。小さな可愛らしいサイズの瓶が。
『それで作るのがおすすめだよ!』と教えてくれたのは、同級生のバイト仲間。自分よりも二十歳になったのは数ヶ月遅く、合法的に飲酒ができるようになったのはつい最近のはずなのに、既に何種類ものお酒を飲んでいて驚いた。お酒を飲むイメージなんて全くなかったのに。
……まあ、日本酒やウイスキー、酎ハイ、焼酎といろいろ嗜んでいる(らしい)彼女が言うのなら間違いないかと、指定されたボトルを手にとり、レジに向かうことにした。
「……さて」
家に帰るとすぐに、晩酌の用意をした。
晩ご飯代わりにとスーパーで買った惣菜。おつまみにもなるように、少し塩辛いやつにした。面倒だからご飯は割愛。味噌汁はインスタントで。
夕食を用意した後、近くに用意した代物を確認する。コンビニで買ったウイスキーと、家にあった牛乳、砂糖、そして小さなグラス。
まずはグラスに牛乳を適量。そこに砂糖を溶かして、そのあとにちょうどいいくらいの濃さになるよう、ウイスキーを入れる、だっけか。
作り方を思い出しながら、時々味見をしつつ、お酒を割る。
「できた。これが『カウボーイ』か……」
古本屋で買った小説の中に出てきたカクテル、『カウボーイ』。本を読みながら、どんな味なのだろうかと気になり続けていた、そのお酒が、目の前にある。
ごくり。一口飲み込んでみる。
甘くて、でもウイスキーの味がしっかりあって、美味しい。
ついに、小説の中に出てくるお酒を飲めるようになった。そして、それを口にした。そのことがとても感慨深くて、ついつい口角が上がってしまう。
お気に入りのお酒が増えた、ある夜のことだった。




