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2020/10/21『空白』『退廃』『強欲』

『欲なんかあったってさ、どうしようもないよ。心の空白は埋まらないし、強すぎる欲は下手したら身を滅ぼす。退廃が待っているのさ』

『そう言われても……欲がなけりゃ、人は生きていけないよ。確かに強欲なのはよくない。でも、無欲は生きる屍なんじゃないかな』

『もちろん欲がいらないとは言わないよ。いい方向に使えば人は成長できるし、幸せになれるんだから』

 オンライン授業のさなか、おれは友人とラインで欲について話し合っていた。というのも、今度提出するレポートのテーマが『欲について』だったのだ。

 なんと単純明快な内容なんだ、と思ったそこの人、頼むから代わりにレポートを書いてくれ。案外面倒なんだ、これが。

『へえ、その根拠は?』

『ん? 自分の価値観でしかないよ。畜生――獣のように自分の欲のためだけに動いたって、心は満たされない。餓鬼のように欲望に駆られてひたすら何かをむさぼったとしても、心は空白のまま。そうじゃないか?』

『なんだか十界論を思い出すな。今受けてる講義が仏教についてだから』

『変わった講義だな』

『忘れてねえか? ここは仏教系の大学だぞ?』

『確かに、違いねえな』

 友人のメッセージを見ていたら、なんだかあいつの笑い声が聞こえてきたような、そんな錯覚を覚えた。

「えー、神野さん。これまでの話を聞いて、どう思いましたか?」

 げっ。この教員、唐突に俺のことを指しやがった。

「……えーっと、すみません。ところどころ、こちらの電波が悪いのか、聞こえにくかったところがあるのですが」

 そうごまかすと、「……あ、そう。分かりました」とあっさり引き下がった。

 かと思いきや、突然画面共有機能でワードを映して見せて、『これまでの話を聞いて、どう思いましたか?』と打ち込んだ。

「これで分かるでしょう。神野さん、どうですか?」

 そうじゃねえ。心の中で、思わず突っ込む。

 仕方がないので、先生の問いかけが聞こえてないふりをして切り抜けた。

2020/10/23 23:24

誤字があったので修正しました。

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