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2020/10/20『雨』『苦い』『漫画』
雨が、降っていた。
『あんたの漫画は面白くない』
わんわんと耳元で響く、誰のものか分からない声。
幻なのか、現実なのか。
よく分からないまま、雨の中を歩き続けた。
傘なんてないから、びしょ濡れになった。
口の中に入った雨は、苦かった。
コンテストに応募した漫画が落選した。
それを友人に見せたら「これのどこが面白いの?」と問いかけられた。
兄弟に見せたら「ありきたりでつまんない」と投げ返された。
自分で見返したら、突然これを描いた自分が嫌になって、世界が色を失った。
モノクロの世界で、歩き続けた。
あの漫画はいつしか落としてしまった。
心と一緒に落としてしまった。
きっとどこかで濡れて踏みにじられて、ただのゴミになるのだろう。
もう心の痛みは感じなかった。
悲しくもなければ辛くもない。
けれど、なぜか止まらない。
降り注ぐ雨と、溢れ出す涙が。




