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2020/10/16『少女』『憤怒』『魔法』
――あなたに会いたい、なんて言ったら怒るかな。
そんなことを思いながら、空を見上げる。
窓越しに見える月はけぶっていて、ぼんやりと光を放っていた。
――怒るよね。絶対私なんかに会いたくないよね。
分かってるよ、と呟いた。
私は、あなたの大切なものをぶち壊したんだ。
あなたの心を、粉々に砕いたんだ。
『ありがとう。でも……やっぱり、あなたとはこれからも友達でいたいんだ』
あの言葉は、本当の気持ち。
今みたいに少し寂しい夜には、あなたと一緒にいたい。お酒でも飲んで、どうでもいいことを話したい。
そんなことができる間柄でいたかった。
本当に、ただ友達でありたかった。
でも、その関係を維持することは、どうやっても不可能だったのだろう。
あそこで頷いたら、私たちは恋人になる必要があったのだから。
――私が魔法使いで、あの告白の記憶だけ消せたらよかったのに。
そんなことを考えて。
子どもっぽい、私はもう夢見る少女じゃないんだから、と首を振って。
でも、あなたに連絡するのが怖くて。
私は孤独を抱きしめた。




