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2020/10/03『雪』『希望』『犯罪』

 それは、幼い頃の記憶。

 親の振る舞い全てが正しいと信じていて、親の言葉全てが自分にとっての法で、親を怒らせること全てが犯罪であると思い込んでいた、そんな、無知だった頃の話。


 雪が、静かに降っていた。

 私はその日、一人で人形遊びをしていた。リビング代わりの、小さな和室で。

 両親は出かけていた。家の中で、私は独りぼっち。でも、この部屋から出たら必ずばれて殴られてしまうことが分かっていたから、私は痛い目に合わないために部屋に閉じこもっていた。


 ピンポン、ピンポン。

 チャイムが、鳴った。

 両親は私に「これ、障子を開けてはいけないよ」と言っていた。

「もし開けたら……」

 そう言いながら父親が振り上げたこぶしが怖くて、ここには誰もいないのに殴られるような気がして、私はその場でじっと固まっていた。

 喋ってはいけない。音を立ててはいけない。そんなことをしたら、私の顔や背は真っ青になってしまう。


 ピンポン、ピンポン。

 だというのに、チャイムの音は鳴りやまない。

 音が鳴りやむのを、じっと待っていた。

「――こんにちは、ことねちゃん」

 障子と窓の向こうから、女の人の声がした。

「ことねちゃんのお父さんとお母さんに、ことねちゃんを連れてきてほしいって頼まれたの。お願いだから、出てきてくれる?」


 行かなくちゃ、と私は思った。

 そうしないと、「どうして来なかったんだ」って怒られちゃう。

 慌ててお人形を片付けて、靴に履き替えて、家を出た。


 結論から言うと、女の人は嘘をついていた。

 隣の家に住むその人は、私が虐げられていることに気がつき、両親が出かけている間に私を保護しようとしたのだった。

 その後、なにがあったのかはよく覚えていない。

 けれど、これだけはたしかだ。


 私は両親と離れ離れになり、新たな両親と幸せな毎日を過ごしたこと。

 そして、お隣さんの行動が、私にとって希望の光になったということ。

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