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2020/09/26『憤怒』『恋人』『太陽』

 君の「おはよう」の声を聞かなくなったのは、いったいどのくらい前のことだっただろうか。

 窓から差し込む太陽の光の温かさと、君の優しい「おはよう」の一言だけあれば、僕は朝から幸せになれたんだ。鼻で笑われるかもしれないし、信じてもらえないかもしれないけれど、本当だよ。

 君がトースターでパンを焼き、スクランブルエッグを作って、お湯を沸かしてインスタントのコーンスープをいれてくれるから、ダイニングキッチンには朝ごはんのいい香りが充満していたよね。僕、あの香りが大好きだったんだ。

 朝ご飯を食べながらうとうとしてしまうほど寝坊助な僕に、君は「仕方ないなあ」と楽しげに笑って、香ばしい香りのするコーヒーを淹れてくれる。苦みや渋みが強めの、目がしゃっきりと覚めるやつを。それを飲んで、ようやく僕はぱっちりと目を開ける。

 ――目の前で、君が微笑んでいる。

 僕は「幸せだなあ」って呟いて、君は「大げさだなあ」って返してくる。

 そんな穏やかで優しい朝を消してしまったのは、君の笑顔を消してしまったのは、僕だ。

 もう何がきっかけか忘れてしまった、あの日の喧嘩。僕と君はお互いに怒り、憤って、そして。

 愛しい君は、いなくなってしまったんだ。

 僕の目の前から。きっと、永遠に、だ。

 ……ねえ、僕は君がいないと全然ダメな人間みたいだ。

 あれからの毎日はつまらなくって、砂漠の砂を食んでいるみたいに味気ない。いや、最近は見るものすべてが近所の公園の砂場みたいに灰色で、砂嵐が起こったテレビみたいに不鮮明なんだ。

 ねえ、君に会いたいよ。

 だだっ広い砂漠でも、どこまでも深い海でも、目印なんてない空でも、どこへだって探しに行けるような気がするよ。もし君がそこにいて、僕のことを待っていると知ったなら。

 君は今、どこにいるの?

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