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2020/09/03『聖剣』『受難』『科学』
「科学の力で聖剣は作り出せないのか!」
「いやいやいやいや、ちょっと待て!」
最近ラノベにはまり始めたという友人がそんなことを言い出すもんだから、慌てて止めた。
「ん? どうしたんだよ」
「どうしたもなにもない! どう考えたって無理だろうが!」
あ、ちなみにおれとこいつは、同じ研究所で研究を進める科学者だ。
「いや、できるかもしれないぞ? 科学の力は不可能だと言われてきたことを可能にしてきたんだから」
「そういう問題じゃない! もしできたとしても、そんなの使えないだろう?」
「使える使えないはどうでもいいんだよ。聖剣を手にしてみたいだけなんだ」
あっけらかんとそういう友人に、ついつい呆れてしまう。
「お前なあ……それなら段ボールかなんかで偽物作りつくりゃいいだろ」
「それはロマンがないだろ」
「はぁ……」
時々おれは、こんな風に暴走しようとする友人を止めなければならない。
もう、とんだ災難である。




