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2020/09/02『科学』『晴天』『毒』

 ――彼女はまるで、変温動物のような人間だった。

 生まれつき、つまり先天性の病気だった。


 その少女は常に、温かい場所にいなければならない。

 気持ちよい晴天の時であれば外に出られることもあったが、雲が多い日や冬は基本的に外には出られないし、冷たいものに触れるなんてもってのほかだった。

 毒、とまではいわないが、彼女にとって冷たいものは害をなすものだった。


 けれど、彼女にはあこがれがあった。

「冷たいものに触れてみたい」という願いが。


 彼女が少女から女性になったとき。

 科学の力が急速に発展した時代に、彼女の不思議な病気もまた、治癒可能なものになった。

 彼女は「普通」の人間になって、白い息をもこもこと吐きながら、寒い冬の日でも外に出られるようになった。今では雪や氷などの冷たいものに触れることだってできる。


「私、小さなころから夢だったのよ。みんなと同じように外に出ることが。そして、冷たいから触ってはいけないと言われていた雪に触れることが」

 雪だるまを作りながら、彼女はそう言って笑った。

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