表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
305/430

2020/08/31『科学』『天邪鬼』『紅茶』

 リビングの卓上にプリントやシャーペン、ルーズリーフ、さらに資料となる本を並べ、パソコンと向かい合う大学生。彼女は紅茶を飲みながら、課題に取り組んでいた。

「期末レポートと期末テストの両方で評価されるってなんなの、これ……いや、そんなことはシラバス見て知った上で取ってるんだし、今はとにかくレポートをやるっきゃないんだから!」

 プリントや本を見比べながら、ときにはルーズリーフに考えたことを書き出して頭を整理しながら、パソコンに文字を打ち込んでいく。

「――お姉ちゃん、なにしてるの」

 そこにやってきたのは、彼女の妹。どうでもよさそうな顔をしながら、そんな問いを投げかけて、パソコンの画面を覗き込む。

 パソコンに打ち込まれている文章――レポートのタイトルは「科学的実在論論争に関して」。

「うわ、科学……なんか難しそうなのやってるねぇ」

「でもこれ、科学的知識を問われてるわけじゃないからね? どっちかっていうと多分、哲学寄りだよ?」

「哲学も難しそー。っていうか、どこに哲学要素があるの、これ?」

「だってこれ、科学哲学って科目だからね。そりゃあ哲学要素ないと困るでしょ」

「知らんわそんなの」

 ぽんぽんと軽やかに進む会話。大学生が妹に目線を向けると、彼女は汗だらけの顔に不機嫌そうな表情を浮かべていた。

「ねえ、汗すごいよ。なんか飲み物飲む?」

「いらない」

 妹はそう主張したが、大学生は華麗に無視して台所に行き、妹が大好きなアイスコーヒーを作って戻ってきた。

「はい、これ」

「……いらないって言ったよね」

「ほんとは欲しいんでしょ、天邪鬼さん」

 トイレ行ってこよーっと。わざとそう口に出し、大学生はリビングを離れる。

 一人残された妹は、不機嫌そうな顔をしつつも、アイスコーヒーを一気に飲み干した。

「うわ、濃っ。相変わらずお姉ちゃん、濃いのが好きなんだろうな」

 私の好みは薄いコーヒーなんだけど。そう文句を言いながらも、妹は嬉しそうな笑みを浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ