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2020/08/29『暴力』『童話』『怠惰』

「はぁー」

「ほらそこ、ため息ついてんじゃねぇ」

 ぶつぶつと小言を口にする男性に、女性が「だって」と口を尖らせる。

「こんなに暑いのに集中できますー?」

「それは外の話だ。ここは冷房がガンガン効いてるから、むしろ寒いくらいだ」

 あ、ばれました? と笑う彼女に、男性は思わずため息をつく。

「……とりあえず、童話をかたっぱしから読んでみたわけだが、どうだ?」

 そう問いかけた彼に対し、女性は一言。

「童話は子供に読ませるべきではない!」

「いやいや待て待て、なんでそうなった?!」

 きっぱりはっきり言い切られ、男性は慌てふためく。それを女性が不満げに見ながら、説明を始めた。

「童話って、結構暴力的だと思いません? 真っ赤に焼けた鉄の靴を履かせて死ぬまで踊らせるとか、かかとを切るとか、つま先を切るとか、そんなのばっかり。それ、子供に読み聞かせます? 例えば鳥が小娘の目を潰すなんてシーンが出てくる話を小説投稿サイトに載せるとしたらどうします? 普通R15指定しません?」

「……確かにな」

「でも、童話って調べるとこう出てくるんですよ。『童話とは、児童が読む、または親などの大人が幼年児童に読み聞かせる子ども向けの、民話、伝説、神話、寓話、創作された物語等である。』…… R15ものを子供が読んだり親が読み聞かせするってのがおかしいと思うんですよ」

 むすっとした表情で説明を終えた彼女に、男性はゆっくりと語りかける。

「でもさ、そう言う間に遭うのって、大体悪役か知恵のないやつだろ? 子供に『悪役』や『知恵のないやつ』になってほしくないとしたら、そいつらを子供にも分かる『嫌な目』に遭わせる必要があるんじゃないか? 誰だって焼けた鉄の靴を履いて死ぬまで踊りたくないだろう? かかとやつま先を切ったりもしたくないし、小鳥に目玉を潰されるのも嫌だろうさ。だからあえて、悪役たちにそんな目に遭わせるのさ。最近なんかは刺激的だなんだって言って、ハッピーエンドの童話が多いがな」

 彼の話を聞いた女性は、ムッとした顔をしつつも「確かに、それもあるかもしれないわね」と吐き捨てるようにして言った。

 二人の童話に関する考察は、まだまだ終わらない。

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