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2020/08/20『しょっぱい』『絶望』『コーヒー』
――ブラックコーヒーをお供に、私は今日も夜更かしをする。
豆電球だけをつけたリビング。
机に置かれた、淹れたばかりのホットコーヒー。
充電器に繋がれたスマホ。
スマホに繋がれたイヤホン。
イヤホンから流れ出す音楽。
音楽を聴いている私。
この時間が、一日の中で一番幸せだ。
辛いことなど全て忘れて、自分の世界に浸っていられるから。
だから、どんなに夜遅くになろうとも、絶対にこの時間は欠かせない。
夜更かしをしなければ、生きていけない。
ふと、頬に何か流れていくのが分かった。
それを舐めてみると、しょっぱい。
……泣いている?
どうして、どうして。
「……疲れたよ」
こぼれ出した言葉に、驚いた。
けれど、ますます涙は溢れてくる。
絶望的な、気持ちだった。
無理やり夜中に起きて自分を慰める時間がないと、幸せがないということが。
普通に暮らすだけでは、決して幸せになれないということが。
あまりに、あまりに辛すぎて。
熱いブラックコーヒーを啜る。
涙と混ざってしまったからか、どうしようもなくしょっぱくて、不味かった。




