2020/08/08『悪魔』『真実』『少女』
無垢な少女が、一人。
彼女は信じて疑わない。
悪を滅ぼすものが正義だと。
正義は必ず正しいのだと。
彼女は信じて疑わない。
自分は悪を倒しているのだと。
だから自分は正義で正しいのだと。
そんな少女の耳元で、何者かが囁いた。
「ねえ、君は自分が本当に正しいと思っているの?」
「自分が正義だと思っているの?」
「悪だと思ったことはないんだね?」
――悪魔が自分を惑わそうとしている。
少女はそう思った。
その声は、言葉に憐れみを込めてこう言った。
「君が『悪』の側に立ってみれば分かるよ」
「『正しい』自分が何をしてきたのか」
「君の目は押し付けられた価値観で曇っているんだ」
「汚れてしまった眼鏡のようにね」
「違う立場で、新たな『真実』を見てみればいい」
「そして考えてごらん」
「自分が『正義』か、『悪』なのか」
自分が『悪』の側に立って初めて、少女は知る。
今まで自分が『正しい』と思っていたことが、『間違い』だったことに。
『正義』と『悪』など、簡単にひっくり返ってしまうことに。
――私はどうやって生きていけばいいの?
『世の中、白黒つけられないことだらけなんだよ』
『時には白黒つけなきゃいけない時もあるけどさ』
『でも、全てがそうってわけじゃない』
『むしろ、答えがない問いのほうが多いんだ』
『決めつける必要はない』
『自分に問いを投げかけ続けて、生きていくといいよ』
『答えが変わってもかまわない』
『そのために問いかけ続けるんだから』




