2020/08/07『黄色』『ベッド』『都市』
――なんて狭い都市なんだろう。
地図で自分が住む街を眺めるたびに、近所を歩くたびに、そう思う。
たいして広くない場所に、施設や家をたくさん詰め込んでいる、そんな印象だった。
かつて住んでいた街は、ここに越してくる前の家があった『故郷』は、もう少しゆとりがあったような気がする。地図で見ていても、実際に歩いても。
――でも、まあ、嫌いじゃないな。
コンビニに用があるからと外を歩きながら、そっと呟く。
こぢんまりとしている空間は、昔から悪くないと思っている――むしろ好きだ。
「あ」
ふと、足元で黄色い花が咲いているのを見かけた。細く折れそうな茎に、色鮮やかな五枚の小さな花弁。故郷でも時々見かけたなあ、と懐かしく思い返す。
――故郷にいる家族は、元気かな。
そんなことを考えながら、再び歩き出す。
家に帰ったら電話でもするか、思ったところでコンビニに到着した。
「……あった」
猫の写真がプリントされた、箱ティッシュ。ベッドの枕元に置いていたものがなくなったから、買いに来たのだ。多分スーパーに行った方が安上がりだけど、コンビニのほうが近いし、もう一つここに用があるから、まあ高くてもいいやと思ったのだ。
購入した箱ティッシュを片手に向かったのは、コピー機だ。ポケットからスマホを取り出し、写真アプリを開く。
どれどれ……あった。ツイッターで仲良くなった人が、小説をネットプリントに登録したというので、その番号をスクショして保存しておいたのだ。
ポチポチと番号を打ち込み、小冊子の設定をして、お金を入れ、印刷。
これは、家に帰りながら読もう。どんな物語が待っているのだろう。とても楽しみだ。




