2020/08/02『青』『紫』『魔王』
真夏の空のように濃く、真冬の空のように透き通った青い目。宝石のように艶めく、長い長い紫色の髪。
彼女は、見る人全てを魅了させる、美貌の持ち主。
けれど、どんな時でも、どんな場所でも、こう言われているのを忘れてはいけない。
『人は見かけにはよらない』
――青い薔薇が、城の周りを取り囲むようにして咲き誇っている。
その城の門を守るのは、武器を持った魔人たち。
アーチ状の、青い薔薇に飾られた門を通り過ぎると、そこに広がるのは花畑。
言わなくても分かると思うが、言っておこう。
ここに咲くのは、色とりどりの薔薇。青はもちろん、白、黄色、ピンク……赤を除く、すべての色の薔薇がそこにはある。城の主が好む、美しい花。
赤薔薇がないのは、城の主が血を嫌うから。
血を吸って育ったかのような、そんな色をしている赤薔薇は、一本もこの城にはない。
さあ、庭を抜けて城に入ろう。
その入り口で番をしている魔人が、扉を空けてくれる。よく手入れされているからか、軋んだ音は聞こえなかった。
ふかふかの絨毯を踏みながら、玉座のある部屋へと向かう。あちらこちらで警備をしているのもまた、魔人だ。多分もう、この先にいるのが誰なのか、君たちも予想ができているだろう。
……さあ、この扉の先に、彼女はいるよ。
真夏の空のように濃く、真冬の空のように透き通った青い目。宝石のように艶めく、長い長い紫色の髪。見る人全てを魅了させる、美貌の持ち主。
彼女は、魔人たちが守る城の主――魔王である。




