表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
267/430

2020/07/24『紫』『甘い』『魔術師』

 紫色の、怪しい煙が立ち込める一室。

 その中で、人の形をした一つの影が動き回っている。

「えっと、あれはどこに置いたかな……早く鍋に入れないと、中身が焦げてしまうじゃないか」

 男か女か分からない、中性的な声。

 視界の悪い部屋の中をよく見まわしてみると、火にかけられた鍋があった。そこからあの煙は出ているらしい。

「――ああ、あったあった。量はこれくらいで……」

 影が、鍋の中に葉っぱのようなものを三枚ほど入れる。すると、紫色の煙が一気に晴れ、甘い香りがあたりに漂い始めた。

「うんうん、悪くはないかな」

 どろどろとした液体状の、鍋の中身をかき混ぜながら、影の正体――肩ほどまで伸びた黒髪を持つ、性別の読み取れない顔をした人は呟く。

「よし、これで……」

 ニイッ、と口元に笑みを浮かべる。そのまま、その人は鍋の上に手をかざすと、不思議な言葉を口にした。

 次の瞬間、鍋の中からまばゆい光があふれ出す。

 その人が口にしたのは、一般的には「呪文」と呼ばれるもの――「魔術語」という、特殊な言葉だ。

 魔術語を話すその人は、魔術師だった。

「――さて、これで出来上がり」

 鍋の中には、先ほどまではどろどろの液体があったはずなのに、魔術の力がなせる業なのか、たくさんの粉が入っていた。

 魔術師が腕を一振りすると、鍋の中にあった粉は一瞬で、たくさんの小袋の集まりになった。袋には、『風邪薬 一日三回 一回一包 食後に』の文字が。

「さて、これを街のみんなに配りに行こうかな」

 魔術師は得意げに微笑んで、小袋をかごに詰めると、颯爽と部屋を出ていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ