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2020/07/19『退廃』『暴食』『ベッド』
あるひとは、恋人と手をつなぎ合っていた。
あるひとは、ベッドの中に潜り込んでいた。
あるひとは、本を読んでいた。
あるひとは、音楽を聴いていた。
あるひとは、テレビを見ていた。
あるひとは、暴食し続けていた。
あるひとは、窓の外を見ていた。
窓の外には、退廃した街が広がっていた。
今日は、世界が滅びる日。
ゆっくり、数日前から街は崩れて、壊れて、辛うじて人が住めるくらいの、そんな空間になっていた。
街は、草花は、動物は、人間は。
この日、全てなくなるのだ。
死んでも一緒にいたい、と祈りながら。
望まない死を目前にし、恐怖に震えて。
平静を装いつつも、実は怯えながら。
周りの声も現実も、音で閉め出して。
「最期の日」の特集番組を見ながら。
現実から、目を無理やり背けながら。
静かに、ゆっくり、最期を受け入れて。
ひとびとは、『おわり』をむかえようとしている。




