26/430
2018/05/21『人肌』『川』『暴食』
ある村に、それはそれは恐ろしい獣がおったんだそうだ。
その獣は、なんでも食べる獣で、相手が人でも喰ってしまうらしい。
その村に住む人々は獣を恐れた。
愛する人や親息子、恩師や愛弟子を獣に喰われ、村中の人が毎日泣いておったのだという。
死んだネズミや猫などは獣は喰わない。
生きた生き物でないと獣は喰わないのだ。
ある若者が、川で水浴びをしておった。
するとそこにあの獣が現れた。
若者は川に潜った。
潜っても意味はないだろう、そう思いながら。
しかし、獣は来ない。
顔を上げてみると、獣は川を前に尻込みしていたのだ。
(そうか。奴は冷たいものが嫌いなんだ。だから温かいものを喰おうとするんだ!)
若者は獣に冷たい水をかけた。
獣は唸り声をあげて、倒れた。
倒れて、そのまま動かなくなった。
若者は逃げ帰って村人に伝えた。
獣は冷たいものが嫌いだということを。
川の水をかけると動かなくなったことを。
村人は村の周りに川を張り巡らせた。橋はかけず、移動手段は泳ぎか舟にした。
すると、獣の被害がぐんと減った。
人々は喜び、幸せに暮らしましたとさ。




