2020/07/16『漫画』『氷河』『夜』
しんと静まり返った、夜のこと。
心の中にぽっかりと穴が開いたような気分だった。
いや、違う。
それはきっと、常に存在しているものだ。
けれど、普段はどうでもいいようなことでふさがれていたり、興味深いと思えることで目をそらすことができている。
ただ、それだけ。
ふとした拍子に、かさぶたがはがれるかのように「どうでもいいこと」が消え去って、あるいは穴を直視せざるを得ないようなことが起こって、その存在に気づかされるのだ。
この穴は、どうやったって埋めることができない。
漫画を読んでも、登場人物たちは勝手に穴で遊んでいなくなるだけ。ストーリーは無意味な文字列に変わって、石礫になり、からころとむなしい音を立てるだけ。
音楽を聞いても、空腹を無理やり雑草で満たすような気分の悪さを味わったり、音がうつろに響いてより孤独感が増したりするだけ。
何を食べても味なんて感じやしないし、眠ろうとしたところで穴に潜むさみしさがそれを許さない。
いっそのこと、氷河の中で氷漬けになったほうが楽かもしれない、なんて現実味のない空想をしてしまうぐらいには、この穴を持て余している。
もう一度、かさぶた代わりの「どうでもいいこと」ができるまで。
穴から目をそらせるぐらい興味深いことが現れるまで。
このがらんどうの穴と、向き合い続けるしかない。




