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2020/07/13『メモ』『高層』『未来』

 高層ビルの屋上に立つ、一人のひと。

 彼女は目を閉じて耳に手を当て、風の音を聞いているようだった。神のお告げを聞く巫女のような、どこか神秘的で美しい姿だった。

 ふっ、と彼女は目を開ける。

 烏貝よりも濃く深い色をしたその瞳には、隠しきれない驚きがうつりこんでいた。

 耳に当てていた手を下ろすと、虚空から万年筆とメモ帳を取り出し、紙に青い文字を綴った。

 メモを取り終わると、メモ帳から文章を書いたページだけを切り離す。一枚の紙切れは、勝手に紙飛行機の形になり、風にのって空を飛んでいった。

 残されたメモ帳と万年筆は、光となって消える。

「……これで、大丈夫」

 少女は呟き、その場に(くずお)れた。


 紙飛行機は、どこまでも飛んでいく。

 たとえ向かい風がやってきても、風を切り裂いて前に進む。

 そして、ひとりの少年を見つけると、紙飛行機は地上へと舞い降りていく。

 彼に、少女の伝言を伝えるために。


 道を歩いていた少年は、目の前に落ちてきた紙飛行機を拾いあげた。

 青いインクで綴られた文字が透けて見えたため、彼はすぐに差出人を察した。

「……彼女からか。今度はどんな未来を予知したんだろう……」

 紙飛行機を開いて、手紙を読む。

「また無理難題を……いや、仕方がないか。彼女のせいではないし」

 彼は周りに人がいないことを確認して、姿を変えた。黒い翼を背負う、天使の姿に。

「さて、行きますか。『黒翼(こくよく)の天使』の仕事の時間だ」


 屋上にいた少女は、魔女の末裔だ。簡単な魔法を使い、風の声を聞いて未来予知をすることができる。

 そして少年は、天使と人間の間に生まれた者の子孫で、黒い翼を持つことから『黒翼の天使』と呼ばれている。苦しむ人を助けるため、あの少女と協力しながら悲惨な未来を変えようと奮闘している。

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