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2018/05/20『戸惑い』『学校』『酸っぱい』
今日は始業式。
私は内気だし、仲の良い友達とはクラスが離れてしまった。新しい友達ができるとも思えない。
ああ、嫌だ。
嫌。
ドキドキする。
緊張する。
ほんのり口の中が酸っぱかった。
新しいクラス。
誰も仲良しの子がいない。
担任の先生もよりによって今年異動してきた先生だ。
なんでよ。
嫌だ。
逃げ出したい。
嫌だ嫌だ嫌だ。
口の中が酸っぱい。
レモンにかじりついた時よりも酸っぱい。
胃液が逆流してきたら、きっとこんな味だろうって思う程の、嫌な、酸っぱい味。
口の中にはなにもないのに酸っぱい。
もう、帰りたい。
「ねえ、同じクラスになるの初めてだよね!」
ああ、明るい子はいいなぁ。
私なんかには、友達はできない……。
「どうしたの?体調悪い?」
黒く澄んだ目が私を見つめていた。
「えっ……私?」
「そうだよ!ずっと俯いてるから……大丈夫?」
「……大丈夫、ありがとう」
私に声をかけてくれるなんて。
夢じゃ、ないよね?
戸惑う私に彼女は笑いかける。
「うちは本庄紗衣!仲良くしてね!」
「あ、私は、橋本凛。よ、よろしくね」
もう、酸っぱくない。




