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2020/07/06『本』『紫』『教皇』

 教皇だけが持つことを許される、立派な装丁の本があった。表紙の色は、ほんの少し赤みがかった紫だ。

 紫は、知恵と慈悲を表しているという言い伝えがある。そのため、この色は、その両方を持つ教皇だけが身につけることを許されているのだ。


 教皇は心優しい者だったため、本の中身を他者に見せることが多々あった。

 そこには、黒々とした文字で自分たちが信じる教えの大切なことがたくさん書いてあったため、人々は「確かにこれは教皇様が持つにふさわしいものだ」と納得していた。


 そんなある日、一人きりで教会で掃除をしていた女性が、オルガンの椅子の上に置かれているあの本を見つけた。

「……ほんの少しだけ」

 魔がさしたのだろう。彼女はその本のページをめくってしまった。


 彼女が見たのは、黒々とした文字ではなかった。

 紫色の、流れるような文字だった。

「『この、文、字を……読める、者は』……えーっと……?」

「読んでしまったか」

 突然響き渡った、教皇の声。

「も……申し訳ありません!」

 慌てて本を閉じ、頭を下げる女性。

「いや……もう起こってしまったことは仕方がない。

 ――紫の文字が、読めたのだろう?」

「は、はい……」

 教皇は本を手に取り、女性に手渡した。

「この本は、教皇を選ぶ。紫色の文字が読める者が現れたら、教皇の座を譲る決まりだ」


 こうして、女性の教皇が生まれたのだった。

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