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2020/06/30『受難』『方言』『苦い』
――さいならね。
――また、次の夏まで、待っとるけんね。
地方に住む祖母が他界した。
今の時代では、まだ早死にと呼べる歳だった。
前々から病気で体を悪くしていることは、知っていた。けれど、なんとか生き延びてくれるんじゃないか、なんて思っていたのも事実だ。
だから、正直信じられなかった。
柔らかな方言混じりの言葉を話す、優しい声。
いつでも笑顔を絶やさなかった、柔和な表情。
一瞬で過ぎ去ってしまった、楽しい思い出たち。
その全てが思い出されて、辛かった。
涙は塩辛くて、苦かった。
葬儀の間、私は泣くことしかできなかった。
それでも、帰る時はやってくる。
実家へと戻るため、祖父母の家を出る。
「……またね。次は、新盆に」
そう、こっそりと、呟いた。
――さいならね。
――また、次の夏まで、待っとるけんね。
祖母の柔らかな声が、聞こえた気がした。
正直言って、方言があっているかは分かりません。間違っていたらすみません……。




